陽斗が美桜にプロポーズをしたあの夜から、数ヶ月が過ぎた。 凍えるように寒かった冬は終わりを告げて、街には柔らかな春の光が満ちている。 そして今日、二人の結婚式が行われる。 会場となったのは、都心から少し離れた場所にある、緑豊かな庭園に囲まれた小さなチャペル。 雲一つない青空の下、満開の桜の花びらが祝福するように風に舞っている。 チャペルの中には、今日の祝いに駆け付けた多くの友人や会社の仲間たちの笑顔があった。 柔らかな光がステンドグラスを通して降り注いでいる。これから始まる式典を温かく照らし出していた。 式の準備を整えるための控え室・ブライズルームは、祝福の気持ちを表すように、たくさんの白い花で飾られていた。柔らかな春の光が大きな窓から差し込み、部屋中に満ちている。 その光の中心で、美桜はウェディングドレス姿で鏡の前に立っていた。 ドレスは派手な装飾のない、ごくシンプルなデザイン。しかし上質なシルクの滑らかな光沢が全身を優しく包み込み、美しさを引き立てていた。 部屋には、プロジェクトチームの女性メンバーや、来春から三ツ星商事で働くことが決まった彩花も駆けつけていた。「美桜さん、本当にきれいです! 本物のお姫様みたい……」 彩花がうっとりとした表情でため息を漏らす。「リーダー、泣きそうです、私……」 チームの後輩の一人が涙ぐみながら言うと、もう一人が笑いながら続けた。「本当に。あの佐伯課長に虐められてた頃が、嘘みたいですよね」 その言葉に、美桜は静かに微笑んだ。(あの夜、全てを失ったと思っていた。でも今は、こんなにもたくさんの大切な人たちに囲まれている) 鏡に映る自分の姿は、もう怯えてうつむくだけの女性ではない。 美桜は、祝福の言葉をくれる友人たち一人ひとりの顔を、愛おしい気持ちで見つめた。「みんな、ありがとう」 その声は、幸せな感謝の気持ちに満ちていた。◇
Last Updated : 2025-12-03 Read more