週明け早々になると、プロジェクトの第一回公式キックオフミーティングが開かれた。ガラス張りのモダンな会議室には、三ツ星商事側のメンバーと、パートナー企業である「キサラギ・イノベーションズ」の精鋭たちが集まっている。 リーダー席に座る美桜は、責任の重さに押しつぶされそうになりながらも、背筋を伸ばした。隣でサブリーダーの陽斗が、落ち着いた様子で資料に目を通していることが、彼女の唯一の支えだった。一方で末席に座る翔と玲奈は、明らかに不機嫌なオーラを放っている。 会議室の空気は、期待と緊張で張り詰めていた。リーダー席に座る美桜は静かに息を吸い込むと、凛とした声で口を開いた。「皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます。本プロジェクトのリーダーを拝命いたしました、営業企画部の高梨です。それでは、早速ですが、プロジェクトの全体像について、基本方針を共有させていただきます」 彼女の声には、以前のような控えめな様子はない。膨大な資料を完璧に頭に叩き込み自分の言葉で再構築した、自信に満ちた響きがあった。 美桜は複雑なプロジェクトのロードマップを、驚くほど分かりやすく論理的に説明していく。技術的な側面、市場のポテンシャル、そして潜在的なリスク。その全てが緻密なデータによって裏付けられていた。 議論が各部署の役割分担という、最も揉めやすい議題に移った時だった。案の定、営業部の翔が腕を組んで横槍を入れてきた。「異議あり。そのタスクの割り振りでは、我々営業部の負担が大きすぎる。第一線で数字を作るのは俺たちなんだ。もっとリソースを割いてもらわないと、現場が回らない」 その言葉に、他の部署からも「うちもそうだ」「人員が足りない」といった不満の声が上がり始める。会議室が不穏な空気に包まれかけた、その時のこと。 陽斗が口を開いた。挙手も何もない発言だったが、実に完璧なタイミングである。「皆様、お手元のタブレットの15ページをご覧ください。そこに各部署の現状のタスク量と、本プロジェクトで発生するタスクの予測所要時間を、過去5年間の類似案件のデータに基づいてグラフ化したものを追加しておきました」 社員たちが慌ててタブレ
Last Updated : 2025-10-11 Read more