これは本当に何の力もない、色あせた言い訳だった。一方、結衣は拓海が電話を切るのを見て、急いで尋ねた。「どうしたの?」「大したことじゃないよ。中村さんが仕事を辞めたいって」拓海はスマホをしまった。結衣はほっと大きく息を吐いた。でも、たとえあの使用人が真実を話したところでどうだというの?自分でやったことに怖気づくわけもないし、拓海の前では知佳でさえ自分には敵わない。使用人なんて、何の力も持っていない。だって、自分はもう少しで知佳を殺しかけたのに、拓海はそれでも自分の味方だったのだ。そう思うと、自然と顔がほころぶ。同時に、知佳のドレスを引っ張り出した。「うわぁ、こんなにきれいなドレス、私にくれるの?」目を輝かせて言った。「それは……」拓海が一瞥する。「知佳のだよ」「知佳の……」結衣は目をくるりとさせて、「拓海、ちょうどよかった!最近チャリティパーティーに出るんだけど、文男と拓海が連れて行ってくれるって。ドレスがなくて困ってたの。これ、貸してくれない?」拓海はわずかに困った表情を見せた。「なんでこれなの?知佳のサイズだし、君には合わないかも。新しく買いに行こうよ。これは国内デザイナーのドレスだし、ディオールとかシャネルでもいいじゃないか」「いやだ!」結衣はドレスを手に取り、何度も自分に当ててみせる。「拓海、あの早坂淳ってどれだけ人気か知らないでしょ?彼はイギリスに留学してて、さっき言ったブランドにも勤めてたの。帰国してから自分のアトリエを立ち上げて、今や海外でも大人気。レッドカーペットのドレスも彼に頼む芸能人が多いんだよ。でも予約もなかなか取れないくらい」「そうなのか?」拓海は五年前に知佳が服のことを任されて以来、ファッション界には関心がなかった。「そうだよ、拓海、お願い……まず試着だけさせて。もし着られたら譲ってくれない?」そう言うなり、拓海の返事も待たずにドレスを持って共用のバスルームに向かった。戻ってきた時、結衣の表情は明るくなかった。ドレスは小さすぎたのだ。横のファスナーがあと五センチは上がらない。「拓海……どうしよう?私、早坂淳のドレスがどうしても欲しいの!」「じゃあ、新しくオーダーしよう」拓海が言った。結衣の目がぱっと輝く。「今すぐ行ける?」その声に待ちきれない気持ち
Read more