答えの出ない問題だ……新吾は鼻をすすった。「幸い……幸い文男が、外注先の何社かへの支払いのために、お前の代わりにサインしろって俺に言ってきたとき、俺、承諾しなくてよかったよ。そうじゃなかったら……」そう思うとますますつらくなってきて、それでもやっぱりあの「なぜ」を口にした。「なんでだよ?どうして自分でペーパーカンパニーなんかいくつも作って、会社の金を抜くんだよ!会社の金って、みんなのもんだろ?」拓海はため息をついた。「お前はいったん帰って落ち着け。俺が会社のことを整理してからだ」新吾は彼を見つめ、今の拓海に相当な重圧がかかっているのを分かっていて、また鼻をすすった。「俺も仕事に戻るよ……拓海……」と言いながら、目のふちを赤くした。拓海が慰めようとしたとき、新吾が先に口を開いた。「どうなろうとさ、お前には俺がいる。俺たち、誓っただろ。少なくとも俺は変わらないから」拓海ははっとしたように表情をゆるめ、新吾の肩をぽんと叩いた。新吾は部屋を出ていったが、家には帰らなかった。会社で一日中むちゃくちゃに働き通して、へとへとになってからようやく家に戻った。どこか様子がおかしいのに気づいて、馨は理由をしつこく問いただした。彼は本当は言いたくなかった。馨はお腹に赤ちゃんがいて、心配させたくなかったからだった。けれど馨が何度も何度も聞いてきて、今にも怒り出しそうになったため、彼はようやく一から十まで正直に話した。文男のやったことを聞いても、馨はふんと鼻を鳴らしただけだった。文男がろくでもないやつだなんて、とっくに分かっていたのだ。いつまでもあいつを親友だなんて信じていたのは、拓海と新吾、この二人のおバカだけだった。そのほかに、新吾は会社の行く末のことも心配していた。馨は彼を一瞥して、白目をむいた。「何を大げさな。会社がつぶれたら、うちに帰って一緒にお茶を売ればいいだけでしょ」新吾はぽかんとした。馨ちゃんって、こんなにあっさりしてたっけ?本当は、自分は物欲も低く、暮らしにもそんなに大きな望みはなかった。ただ、馨ちゃんと子どもに苦労をさせるのが怖いだけだった。「今だってうちの暮らし向きは十分いいんだから、もし本当に何かあっても、うちにはあんなに大きな茶畑があるんだし、食べる物に困るなんてことにはならないわよ」そう言ってから、馨は彼
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