終始拓海はぽかんとしていた。一言も口を開いていなかった。弁護士も固まってしまった。いやいや、話が違う。聞いていた話では、新吾のほうがまだ話が通じるはずだったのに?新吾はさらに一言刺すように言った。「ていうかさ、君、本当に弁護士の資格あんの?彼女の弁護引き受ける前に、事件記録ちゃんと読んだか?あいつ、うちの森川社長を毒殺しかけたんだぞ。あんた、うちの森川社長をどんだけの大バカだと思ってんだよ、そんな女の保証人になるとでも?」名指しされた大バカ「……」弁護士は眼鏡を押し上げた。「もちろん読みましたよ。ですが、立花さんは、森川社長は彼女を責めていないと言っていました。もともとの目的も森川社長を害することではなかった、と。自分は森川社長がいちばん愛した女で、どんなことをしても、森川社長はこれまでの関係に免じて、最後の一度は必ず自分を救ってくれるはずだ、と」それから新吾を見て、こほんこほんと咳払いを二つした。「それと……彼女の話では、山城副社長、あなたがいちばん話が通じて、いちばん彼女をかばってくださる方だと……」「ふざけんな!」新吾はいきなりヒートアップした。「バカなのはこいつで、俺じゃねえ!」再び名指しされた大バカ「……」「いいか、この件に俺たちが首を突っ込まないならまだしも、もし本気で関わることになったら、むしろ一生刑務所から出てこられないくらいぶち込んでやりたいくらいだ!」それから新吾は弁護士をさんざん怒鳴りつけて追い返し、ドアをバタンと閉めると、くるりと振り返って拓海に言い聞かせ始めた。「よし、もうあいつは追い払った。もしまた来ても、お前は絶対にヘマすんなよ!」というのも、この弁護士が「森川社長はこれまでの情分に免じて、最後の一度は必ず彼女を助けてくれる」なんてことを言うからだった。新吾は、拓海がもう二度と振り返ることはないと分かっていた。だが、最後の一度だけは助けたりしないかどうか、その一点だけはどうにも信用しきれなかったのだ。弁護士はビルを出たときには、すっかり頭が真っ白だった。結衣の話とはまるで違ったのだ。このあと会いに行く相手も、同じような態度なんじゃないかとさえ疑い始めていた……それでも、行かないわけにはいかなかった。どんな態度を取られようと、行くしかないのだ。玲奈が弁護士からの電話を受けたとき、
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