ロバートは意識不明で、もはや彼女に答えることなどできなかった。医療スタッフがロバートを担架に乗せて救急車に運び込み、拓海もそのまま車に乗り込んだ。ジャスミンは「大変」と驚きの声を上げ続けていたが、救急車が走り去ると、もう何も聞こえなくなった。救命処置が施され、そのまま集中治療室に入れられた。丸一日だった。拓海が戻ったときには、すでに外は真っ暗だった。医者は「容体はとてもよくない、ご家族の方は覚悟しておいてください」と言った。彼には、覚悟しておくべきことなど何もなかった。父親は自分のことをすべて手配していて、彼を呼びつけたのも、おそらくはただ、証人にさせるためだったのだろう――森川修一(もりかわ しゅういち)、別名ロバートという男が、かつてここに存在し、そして去っていったのだということの。彼はかつて、この人生に父親などいなかったことにすると言ったことがあったが、それでも修一が死ぬときには見送りに来るつもりでいた。それでこそ、自分が憎んできたこの父子の縁にも一応の決着がつくと考えていたのだった。夜、父親の家でパンを二口ばかり無理やりかじったが、喉につかえてどうにも飲み込めず、水で何度か流し込んだあと、それ以上はもう食べなかった。暖房を目いっぱい入れてある家のはずなのに、得体の知れない冷気が漂っているようで、ひどく薄気味悪く寒々しく感じられた。二日目の朝、まだ面会時間にもなっていないうちに病院から電話がかかってきて、父親が亡くなったと告げられた。彼は悲しくはなかった。ここでこんなに長く足止めされて、ずっと待っていたのはまさにこの日だったのだ。ただ、理由のわからないまま、あまりにも早かったような気がしただけだった……そのあとの始末も実にあっさりしたものだった。葬儀はせずに直接火葬し、遺骨を埋葬し、墓碑には名前すら刻まなかった。父親自身の希望どおり、刻まれたのはただひと言――「魂なき人」翌日、父親が委任していた弁護士が彼を訪ねてきた。父親が遺言書と、彼宛ての直筆の手紙を残していたのだった。【わが子拓海へ。こんなふうに呼ばれるのをお前がいちばん嫌っていることはわかっている。だが、お前も知っているとおり、お前の父親は頑固者だ。どうか許してくれ、最後にもう一度だけ、頑固にお前をわが子と呼ばせてほしい。お前の父親
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