男性社員の方の挨拶が終わったあと。 私たちの周りにはエントランスにいた社員の方たちが集まってきて、口々に挨拶をされる。 男性社員も、女性社員も皆、新参者の私に対してとても好意的に挨拶をしてくれて、私はほっと安堵した。 滝川さんの専属秘書、なんて肩書きをこの会社に入社すらしていなかった私に与えられて、会社に勤めている人達に反感を持たれてしまったら、と考えていたのだけどそれは杞憂に終わった。 皆、礼儀正しく、私をとても歓迎してくれている様子で、私も自然と笑顔になる。 暫くエントランスで話を続けていたけど、始業の時間が近付き、滝川さんの一声で周囲に集まっていた社員の人達は「また」と言いながら素早く自分の部署に向かって行った。 「き、緊張しました……!」 あっという間に人がいなくなり、私はそれまで張り詰めていた緊張がふっと解けて息を吐き出す。 私の隣にいた滝川さんは、楽しげに口端を持ち上げて得意気に告げた。 「だから言っただろう?問題ない、って」 自信たっぷり、といった様子の滝川さん。 社長室に向かうためにエレベーターへ向かいつつ、私はじとりとした目で滝川さんに向かって話しかけた。 「さっきの男性社員の方、私の事を新しい秘書だって知ってましたね。……もしかして、既に社内には共有済なんですか?」 「まあ……それは、事前に」 「も、もう……!どうやってご挨拶しよう、とか、どうやって先輩達と親しくなろう、とか沢山悩んでいたんですよ!先に知らせていたなら教えてください!」 「ふはっ、すまない。加納さんが陸と凛に夢中になってたから、仕事の話はあとでいいかな、と思ってて。つい話し忘れてしまったんだ」 ごめんね?と首を傾げて、悪びれもなくそう言う滝川さんに、私は隣にいる滝川さんの肩を軽く叩く。
Last Updated : 2025-11-22 Read more