「そ、そんな…滝川さんの相談も、私がお家に住まわせて頂いているお礼で…」 お礼のお礼なんて、とんでもない。 私がそう言おうとしたけれど、滝川さんの笑みが深くなる。 「あの時間の消費はお礼の域を超えている。加納さんが受け取ってくれなかったら、そうだな…。加納さんにあの時間に見合う金額を振り込むよ。それで俺に払ってくれればいい」 「滝川さん──」 「今回のパーティーは俺に付き合わせてしまうんだから、良かったら受け取ってくれ。この怪我の手助けもとても助かってるしね」 滝川さんが苦笑いを浮かべつつ、自分の腕を怪我をしていない方の手でぽん、と叩く。 滝川さんの表情から、決して折れてくれない雰囲気を感じ、私はこれ以上滝川さんに断るのも失礼だと思い、頷いた。 「ありがとうございます、滝川さん。その、お礼は絶対にさせてくださいね」 「はは、楽しみにしてる」 笑顔で頷く滝川さんに、私も笑みを浮かべ彼にお礼を伝える。 それから、私たちは休憩を終えてドレスに合う靴を選んだ。 ドレスと靴を選び終えた私たちは、滝川さんの会社にやって来た。 怪我の具合も大分良くなった滝川さんは、今まで通り会社で仕事をする。 私はと言うと、滝川さんの相談に乗るためにまた会社にお邪魔する事になったのだ。 「加納さん。すまない、ちょっと急ぎの仕事を片付けるから、もし良ければ社内を見て回っていて」 「分かりました。お仕事頑張ってくださいね、滝川さん」 「ああ、ありがとう」 滝川さんと別れ、私は持田さんの案内のもと、社内を見て回る事になった。 「加納さん、もし良ければテラスに行かれますか?社内でも眺めのいい場所なんです」 「本当ですか?行きたいです」 「分かりました、ご案内しますね」 持田さんが私の車椅子を押してくれる。 持田さんは、滝川さんの秘書だ。 だからだろうか、社内を移動しているとすれ違う社員が皆頭を下げてくれる。 そして、持田さんが押す車椅子に座っている私を、興味深そうに皆が見てくる。 「すみません、加納さん……不快ですよね」 色々な人から視線を向けられている状況に、持田さんが申し訳なさそうに謝罪を口にする。 滝川さんや、持田さんと一緒にいる私に興味を抱くのは当然だ。 だから私は笑顔で持田さ
Last Updated : 2025-11-11 Read more