Alle Kapitel von 婚約者は私にプロポーズをしたその口で、初恋の幼馴染に愛してると宣う: Kapitel 111 – Kapitel 120

191 Kapitel

111話

ふう、と滝川さんの長い溜息が室内に落ちる。 そして俯いていた顔を上げると、忌々しげに三橋さんが退出した扉を見つめ、吐き出した。 「まさか、こんな幼稚で、愚かな事をしでかすとはな……」 「ええ、本当に……」 滝川さんの言葉に、同意する。 三橋まどか。 麗奈が海外にいた時の大学時代の後輩。 麗奈が帰国して、彼女も後を追うように帰国したらしい。 そして、麗奈からさんざん私の話を聞いていて、悪評を吹き込まれていた三橋さんは、麗奈の話を鵜呑みにして何も考えずに、麗奈の頼みを聞き入れた。 ほんのちょっとの小銭欲しさに、麗奈から入手した画像を添付して、言われた通りの文章を入力して、社内チャットに投稿した。 しかも、麗奈からはこう言われたらしい。これで滝川さんを救った恩人、となれるから、彼に近付けるきっかけになるわよ。と──。 「まさか、お金と滝川さんに近付きたいと言うそんな理由であんな事をしでかすなんて……」 「ああ。大事になるとは思わなかったらしいな。あんな事を書き込めば、その後どうなるか……想像もしていなかったんだろう」 「目先の欲望に目が眩んだ、って言う事でしょうか」 「……それか、柳麗奈の狙いは別で、三橋まどかはただの捨て駒扱いだった。か、だな。」 捨て駒扱い──。 大学の後輩で、面識のある人に対してそんな事をするだろうか。 友人、じゃないの?と、私は麗奈の考えが読めなくなる。 「どうも、加納さんに対して並々ならぬ執着心を持っているな……。暫く、加納さんは1人で行動しないでくれ」 「──えっ!そ、そんな危険ですか!?」 滝川さんの言葉に、私はぎょっとしてしまう。 まさか、1人で行動しないように、と言われるくらいだとは思わなかった。 だけど、滝川さんは至極あっさりと頷く。 「当然だろう?加納さんはもうとっくに清水と婚約を破棄していて、関わりがないって言うのに……あのパーティーでもわざわざ加納さんに柳麗奈はつっかかってきたじゃないか?用心するに越したことはない」 「そ、そうでしょうか?」 「ああ。暫くは今まで以上に気をつけてくれ」 滝川さんの言葉に私が頷いたその時──。 社長室に、焦った様子で間宮さんが駆け込んできた。 「た、滝川社長……っ!」 「──間宮?
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-11-27
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112話

ネットニュースになっている。どうして、何で突然。私は急いでタブレットを起動し、滝川さんに駆け寄る。間宮さんがタブレットを操作して、問題の記事を表示してくれた。「──何だ、これは……」滝川さんが愕然と呟く。タブレットに表示されたネットニュースの記事を見て、私は驚きに言葉を発せられない。記事には、おもしろおかしく事実を捻じ曲げ、私と言う悪女に滝川さんが夢中になり、社長という権力を行使して悪女を自分の秘書にした、と大きく見出しが出ている。そして、滝川社長が夢中になった悪女は、若手社長や御曹司などを狙って、妊娠して子供を理由に婚約を取り付け、捨てられる度に中絶手術を繰り返している、とんでもない人間だ、と書かれてしまっている。滝川さんの名前と、写真は出されてしまっている。だけど、「悪女」に関しては写真も何もないけどイニシャルだけが書かれている。イニシャルは「K,K」。この会社の社員なら、簡単にそれが誰かなんて分かってしまう。それに、この間黒瀬さんのパーティーに参加していた人達も、察してしまうだろう。滝川さんが最近雇った秘書──ましてや、専属秘書など、私しかいない。「なんで……ついさっき…、社内チャットに書かれたばかりなのに……」私は信じられない気持ちで、呟く。滝川さんも、間宮さんも真剣な表情で考え込むようにして口を噤んでいる。社長室には重苦しい空気が流れ、息苦しささえ感じる。そんな中、滝川さんが重々しく口を開いた。「……もともと、柳麗奈はこれが狙いだったんだろう」「……え?」滝川さんの言葉に、私が顔を上げると、補足するように間宮さんが説明してくれた。「元々、滝川社長は知名度も……女性からの人気も高いです。そんな滝川社長が、女性に騙されている、とチャットで投稿があれば、社長に懸想しているうちの女性社員が動くと予想したんでしょう。……柳麗奈は、この事を外部に漏らす事が目的だったのかもしれません」「そして、記事になってしまえば、真実を知らない人達は……信じ込む。……ネットニュースになれば、多くの人がこの事を知るだろう……株主にも、それは伝わる」滝川さんの言葉に、真剣な表情で間宮さんが頷いた。「滝川社長……。会長がお呼びです。至急、本家に戻るように、と」「……分かった。すぐに向かう。午後の予定は──」
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-11-28
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113話

滝川さんに車で送ってもらい、私は滝川さんの家に戻ってきていた。 「もしかしたら、記者が張り付いてるかもしれないから、インターホンが鳴っても出なくていい。陸と凛の事を見ていて」 「分かりました。……その、色々とごめんなさい、滝川さん」 「加納さんが責任を感じる必要はない。そもそも……あの日加納さんを助けたのは、俺の意思だし、それからだって俺が勝手に加納さんの手助けをしたくてしてるだけだよ」 柔らかく微笑みながら滝川さんがそう言ってくれて。 私は自分のせいで滝川さんや、会社に迷惑をかけてしまっている、とずっと沈んでいた。 だけど、滝川さんも、さっき会った間宮さんも、気にしないで。と言ってくれた。 本当に気にしない、と言う事はさすがに出来ないけど。 わざと、こんなデタラメを吹聴した人達は絶対に許せない、とふつふつと怒りが込み上がってくる。 「じゃあ、俺はちょっと本家に顔を出してくる。……帰りは、遅くなるかもしれないから、夕食は先に食べていて構わないよ」 「分かりました。その、気をつけて行ってきてくださいね」 「ああ。ありがとう。行ってくる」 滝川さんは、目を細めて微笑む。 そして私の頭をさらりとひと撫でしてから玄関扉を開けて出て行った。 鍵を閉めて、振り返る。 リビングの方向から、人の気配を感じ取ったのだろうか。 豆柴の陸と凛が鳴いているのが聞こえた。 「──よし。私がうじうじ考えていても、しょうがないわ。滝川さんや持田さんが戻ってきたら、麗奈の事を相談しよう」 そして、私がこのまま会社にいてもいいのかどうか。 噂が社内に広まり、終いにはネットニュースにまでなってしまった。 滝川さんは、その事で会長──滝川さんのおじい様に呼び出されてしまった。 きっと、事実確認が行われるのだろう。 その時に、もしかしたら。 「私が、加納家の人間だって……」 滝川さんの家族にも、知られるかもしれない。 そして、私が昔にやらかしてしまって、絶縁状態な事も、知られるかも。 そうしたら、滝川さんの近くにそんな人間がいるのを良しと思わないかも。 この家を──。 滝川さんから離れないといけないかもしれない。 そこまで考えて。私は自分の胸にズキリ、と痛みが生じた。 すぐに思考を切
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-11-28
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114話

滝川さんのお家には、お手伝いさんがいる。 掃除、洗濯、今では陸と凛のご飯の用意をしてくれている。 私が滝川さんのお家にお世話になり始めた頃、紹介してもらったお手伝いさんは、年配の女性で、穏やかでとても良く笑う人。 その方は、午後2時くらいには仕事を終えて家に帰ってしまうので、今の時間にはもういない。 秘書と、デザイナーとして雇ってもらう事になるまで。 私も家事の手伝いをしようとしたけど、滝川さんにも、お手伝いさんにも怪我をしているんだから無理はしないで!と言われてしまい、滝川さんのお家で私が家事手伝いをした事は殆ど無い。 何か、やる事はないかな、と室内を見回ってみても、掃除は綺麗に終わっていて、洗濯物も全部済んで各自の部屋に届けられている。 夕ご飯を作るために買い出しとか、と思ったけど、滝川さんから記者がいるかもしれないから気をつけて、と言われている事を思い出した。 「これじゃあ、買い物にも行けないし……。陸と凛の散歩はまだ早いし……」 陸と凛は、お手伝いさんがいる間にたっぷり遊んでもらったのだろう。 私が帰ってきて、嬉しそうにしてくれているけど、全力で「遊んで遊んで!」と言うように走り回ったりはしていない。 「じゃあ……デザインの勉強でもしながら、陸ちゃんと凛ちゃんと遊ぼうかな……」 ペットの服とかも、可愛いのを考えてみたい。 飼い主とペットのリンクコーデなんて、どうだろう?と思いついた私は、タブレットを取り出してアプリを立ち上げる。 ペンを取り出して、サラサラとタブレットにペンを走らせていると、足元を移動していた凛が構って欲しそうに私の足をつんつんとつつきだした。 「なあに?遊んで欲しい?」 きゃう、と嬉しそうに鳴く凛。 私は笑みを浮かべたまま、凛を抱き上げた
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-11-29
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115話

ぬいぐるみを洗面所で洗い終わり、ふと私は陸と凛が使っているタオルケットも、ついでに洗ってしまおう、と考える。 薄い生地だから、外に干したらきっとすぐに乾くだろう。 そう考え、私はタオルケットを回収し、軽く水洗いをする。 そして、水気を切って、ぬいぐるみと一緒に抱えて外に干すためにベランダに出た。 先にぬいぐるみを物干し竿に吊るして、次にタオルケットを広げる。 タオルケットを留める物を、とふと目を離した隙に、強い風が吹いた。 「──あっ!」 今日は、風がないから油断していた。 タオルケットが、風に攫われてしまった。 ベランダの塀をヒラヒラと舞いながら越してしまい、タオルケットは視界からいなくなってしまった。 「どうしよう……。滝川さんから、外には出ないようにと言われてはいるけど……」 このままにしていたら、タオルケットが汚れてしまうかも。 すぐに拾って、急いで戻ってくれば大丈夫かしら。 「周囲には……人は、いない……?」 2階に上がらないとしっかりとは見えないけれど、ベランダから少し背伸びして周りに記者のような人がいないかどうかを確認する。 記者っぽい風貌の人は、辺りには見当たらない。 それに、人の気配も無かった。 「……さっと行って、取ってこよう」 怪我をした足のままだったら、走る事は出来ないけど。 今は怪我も完治しているから軽く走る事は可能だ。 私はリビングに戻り、サークルの中にいる陸と凛の頭を撫でて、軽く声をかける。 「すぐに戻るから、待っててね」 陸と凛は、不思議そうに首を傾げた。 ふふ、と思わず笑みが零れてしまう。 私は2人を部屋に残したまま、靴を履いて玄関から外に出る。 ドアの隙間から顔を覗かせ、周囲を確認してもやっぱり誰かがいる気配は無い。 私は小走りで外に出て、道に落ちているタオルケットの前まで行き、しゃがみ込んで拾う。 軽く汚れを払い、タオルケットを胸に抱えて立ち上がる。 さあ、家に戻ろう。 私がそう思って振り返った時──。 「……こころ」 「──っ!?」 聞き慣れた、二度と聞きたくない、と思っていた声が、私の名前を呼んだ。 「会いたかった……話をしたかったんだ……」 「清水、瞬……私には話す事なんて無いわ。帰っ
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-11-29
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116話

腕を掴まれた場所から、ぞわぞわとした不快感が込み上げてくる。 私は手を振り払おうとしたけど、しっかり握られていて、振り払う事ができない。 「はな、して……っ!」 「心。一旦、落ち着いてくれ……。こんな所で騒ぎたくない……」 「騒がせているのはどっち!?早く帰って……!」 私の頑なな態度に、清水瞬が辛そうに顔を歪める。 どうしてそんな顔をするのか、理由が分からなくて。 私が不思議に思っていると、清水瞬が口を開く。 「ネットニュースを、見た……!」 「──っ、ネット、ニュースって……」 「分かっているだろう?滝川の秘書って心、お前だろう?どうして滝川の秘書になんか……っ、いや、それより、心の事を酷い女だと書かれている……っ、このまま滝川の所にいるのは危険だろう!?」 「それがっ、どうしたって言うの……!?あなたにはもう関係ないでしょ!?」 私に「関係ない」と言われた清水瞬は、酷く傷付いたような表情を浮かべ、私の腕を掴む力が一層強くなる。 「関係なくなんか、ない……。あのネットニュースの、婚約者って……、俺だろう……。俺たちの子供が、面白おかしく書かれて……」 「……っ、あなたがそれを言うの!?」 あの社内チャットの内容を、記者に漏らしたのは。 ネットニュースになるよう、行動を起こしたのは恐らく麗奈だ。 清水瞬のこの態度も、私を油断させる罠かもしれない。 何も知らなかった風を装っているけど、麗奈と共謀してネットに流した かもしれないのだ。 そんな人と、長い時間話していたくないし、これ以上関わり合いたくない。 「俺がそれを言う、ってどう言う……」 「何も心当たりが無いの!?随分とおめでたいわね。この事を知
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-11-30
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117話

「加納さん、無事ですか?何もされていませんか?」 「持田さん。はい、私は大丈夫です」 「良かったです……。それで……」 持田さんは、駆け付けるなり私に何もないかを確認してくれて、何もない事を知るとほっと安心したように息を吐き出した。 そして、目の前で呆気にとられて立ち尽くしている清水瞬に、鋭い視線を向けた。 「……清水さん。加納さんに何の用でしょうか?」 「お前には、関係ないだろう……。これは、俺と心の問題で……」 「加納さんはお話したくないように見受けられます。これ以上無理に彼女を拘束するつもりなら、警察に通報しますよ」 持田さんの毅然とした態度に、清水瞬は苦虫を噛み潰したように顔を歪め、諦めたように溜息を吐き出した。 「分かった。今日のところは、取りあえず帰る。だが、心」 清水瞬は、去り際に私に向かって顔だけを振り返る。 「滝川の会社にこれ以上いられないだろう。連絡をくれれば、俺がどうにかする」 「……連絡なんて、しない」 清水瞬の言葉に、間髪入れずに私はきっぱりと返す。 どうして、清水瞬がそんな事を気にするのだろう。 どうして、私の事を気にするのか。 理解が出来ない。 私の言葉に、何故か傷付いたような表情を一瞬だけ浮かべた清水瞬は、それ以上何も言わずに帰って行った。 持田さんに促され、私たちは家に戻った。 リビングのテーブルに着いた私は、持田さんの気遣わし気な視線に気付き、苦笑いを浮かべる。 「すみません、持田さん。助かりました……タオルケットを飛ばしてしまったので、外に取りに……。すぐ戻るから大丈夫だろう、と油断した私が馬鹿でした……」 「そんな事ありませんよ。この家の近くにいた清水社長がおかしいんです……加納さんに何の用だったのか……」 「彼は……私にこの家を出ろ。と、言ってきました…。ネットニュースを見た、とも……」 「それを知っていて、何故……清水社長は、その犯人が柳麗奈だと、まさか知らないのでしょうか?」 「知らない振りをして、麗奈と清水瞬が協力している可能性もありそうですし……でも、あの態度は本当に何も知らないような気もしますし……判断がつかない、ですね……」 うーん、と2人して考え込んでいると。 サークルの中にいた陸と凛がまるで「構って」と
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-11-30
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118話

もやもやとした気味の悪さ。 けど、その原因である偽名の記者を調べる事も。 麗奈の私への執着心も。 私1人では、どう対応すればいいのか。 どう、対処すればいいのか──。 自分1人では、何も対処できない今の状況が、歯痒くて、もどかしい。 このままじゃあ、本当に私は滝川さんや持田さん、間宮さんに迷惑をかけるだけの人間になってしまう。 そうこうしている内に、滝川さんが本家から帰宅した。 「──ただいま」 「お帰りなさい、滝川さんに間宮さん!」 滝川さんの後ろから、間宮さんの姿も見えた。 滝川さんが戻ってきた事にほっと安堵したのも束の間。 滝川さんも、間宮さんも。 顔色が優れない。 何か、良くない事が。 そう考えていた私の考えは当たってしまっていたらしくて。 滝川さんは、重苦しい表情のまま、口を開いた。 「少し、時間をもらってもいいかな、加納さん」 「も、勿論です」 私の言葉を聞いた滝川さんは、リビングの椅子に腰を下ろし、目の前の椅子に座るように私を促した。 私が腰を下ろすと、早速滝川さんが言葉を続ける。 「滝川グループの株価が下落している。……あのネットニュースが原因、らしい」 「──えっ」 たった、数時間──。 数時間で、こんなに早く下落するなんて。 私が驚きで言葉を失っていると、滝川さんは続けた。 「加納さんもおかしいと思うだろう?あの書き込みが社内チャットに投稿されて、そんなに時間があいていないのに、ネットニュースになった。そして、
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-12-01
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119話

結局、あの後は滝川さんは電話対応に長い時間を取られてしまい、一旦私は自分の部屋に戻って来た。 ソファに座りながら、スマホを開く。 見なければいいのに、私は今日ネットニュースになってしまった私の記事を調べた。 検索しなくても、経済のニュースでトップに上がってしまっている、このニュース。 今まで滝川さんは女性関係のスキャンダルが記事になった事は無かった。 滝川さんは若くして社長になっているし、経営者としての能力も高く、容姿も良い。 だから、昔から滝川さんの周囲には所謂「玉の輿」を狙った女性や、滝川さんと関係を持ちたい女性が多く、そう言った女性は後を立たなかった。 けれど、滝川さんは女性関係にはとても気をつけていたらしく、今まで彼は女性に関する噂話は浮いた試しがない。 それなのに、今回──。 私のせいで、滝川さんが。 滝川さんの会社が、人から不評を買い、今まで滝川さんが築き上げて来たものが、音を立てて崩れ始めてしまった。 ネットニュースのコメント欄は、炎上状態。 【滝川にはガッカリした】 【しょせん、滝川も女に騙される馬鹿だったか】 【この女、許せない!こんなに凄い人を騙して近づくなんて!】 【誰か、特定班この女を特定しろ!】 【女に騙される馬鹿な社長に、尻軽馬鹿女か、似合いの2人じゃんw】 など、色々なコメントが寄せられている。 寄せられているコメントの殆どが、滝川さんや私への悪口ばかり。 どれもこれも酷い言葉で、滝川さんを罵っていて──。 私だけならともかく、滝川さんまでこんな風に言われてしまうなんて。 どうして、こんな酷い事ができるの。 どうして、嘘の記事を書くの。 私は悔しくて悔しくて。 スマホの画面に集中していた私は、自分の部屋の扉がノックされた事も、そして返事が無い事を不審がって扉を開けられた事も、気づかなかった。 「──加納さん!」 すぐそばで滝川さんの声が聞こえ、スマホが私の手から取り上げられる。 「ぁ……っ」 「こんなもの、見ない方が良い。いや、見ちゃ駄目だ」 「でも…、私のせいで、こんな事に…っ!」 「加納さんのせいじゃない。悪いのは、嘘の記事を書いたこの記者だし、そもそも社内チャットに投稿した三橋まどかが悪いんだ。加納さんが気に
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-12-01
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120話

「……っ」 私と滝川さんは、暫しの時間見つめ合ったまま、硬直する。 じっと滝川さんの目が、私の顔を見つめてきて、私は訳も分からないまま、自分の頬に熱が集まってくるのを感じた。 私が僅かに身動ぎした事で、目の前の滝川さんもハッとしたように慌てて体を離した。 「す、すまない加納さん……。急に触れてしまって、びっくりしただろう」 「い、いえ。私を落ち着かせるために抱きしめてくれたんですよね?あの、ありがとうございます……」 ぎこちない動きで、滝川さんがそっと腕を解き、私を解放する。 力強い滝川さんの腕に抱きしめられた時、確かな安心感と温かいぬくもりに、そのまま縋っていたいような、そんな気持ちが一瞬芽生えた。 だけど、思考を切り替える。 そうしていると、滝川さんが話を変えるように口を開いた。 「さっき、加納さんに言った通り、会社の方は問題ない。始まりの、あの社内チャット。あの犯人はもう判明しているし、あの内容も、事実無根のまるっきり嘘だと、会社で正式に発表する」 滝川さんはそこで一旦言葉を区切ると、私としっかり目を合わせて、続けた。 「そして、事実無根の……誹謗中傷内容を、あたかも真実のように流布した記者に対して、うちの会社は法的措置を取る事を決めた。……それも、明日正式に発表する」 「法的措置を……?で、ですが記者は偽名を使っていて……」 誰が書いているのか、分からないはず。 そんな私の不安を払拭するように、なんて事ないように滝川さんは答える。 「記者名が偽名だったとしても、記事を出した大元の会社は分かっている。……会長の許可も下りた。滝川家は、加納さんを守る方針だ」 「──っ!?」 滝川さんの家が、私を。
last updateZuletzt aktualisiert : 2025-12-02
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