私が座っているソファの左側が深く沈み、剥き出しの肩に男性の手のひらが触れた。 そして、ぐっと引き寄せられてしまった私は、驚いて横を見る。 そこにいたのは──。 「く、黒瀬さん……!?」 「加納さん、先程ぶりだね。滝川社長は──ああ、あそこで捕まっているのか」 くすり、と黒瀬さんの口元が笑みの形に変化する。 そして、私の肩を抱き寄せていた黒瀬さんの手のひらが二の腕を伝い、脇腹、腰へと移動していく。 「──っ!?」 「こんなに美しい女性を1人にするとは……。危ない目に遭うかもしれないよ」 「今のように、ですか……?」 いやらしく私の体を這っていた黒瀬さんの手から逃れるように、私は失礼だと分かっていながらソファから立ち上がる。 滝川さんに触れられるのは、ちっとも嫌じゃないのに。 今、黒瀬さんに触れられた箇所がゾワゾワと鳥肌が立っている。 不快感を隠しもせずに私が顔を歪めると、黒瀬さんは楽しそうに笑った。 「意外と気が強いのか…ますます興味深い」 黒瀬さんも立ち上がり、私に1歩、2歩と近づいてくる。 彼は、このパーティーの主催者で、この会社の経営者。 人の注目を集めているし、こんな場所でさすがに不埒な真似はしないだろう。 そう考えた私は、彼に軽く頭を下げて滝川さんのもとに向かおうとした。 「……ご冗談を。失礼します」 背後からくつくつと楽しげに笑う声が聞こえてきて、私はついつい眉を顰めてしまう。 黒瀬さんを注視していたからか。 私は黒瀬さんに意識を集中してしまっていて、前方の確認を疎かにしてしまっていた。 先程までは誰もいなかったのに。 はっと気付いた時には、誰かが足早に私に近付いて来ていた。 そして──。 「きゃあっ!」 「──っ!?」 どんっ!と私の体が誰かに強くぶつかった衝撃。 そして、硝子が落ちて砕ける派手な音がその場に響いて、私は驚きに目を見開いた。 「ひ、酷い!なにこれぇ!!」 私とぶつかったせいで、持っていたグラスの中身が零れ、服にかかったのだろう。 私の目の前には、真っ赤な染みが広がってしまったドレスを見下ろし、涙目で今にも泣き出してしまいそうな麗奈が私を睨み付けていた。 「心……っ!どうしてくれるのよ、これ!こんな格好、酷
Dernière mise à jour : 2025-11-16 Read More