私の言葉に、彼らはただ静かに耳を傾けていた。 やがて片桐先生が、ふっと厳しい口元を緩めた。「なるほどな。黒瀬君が君に賭けた理由が、少し分かった気がするよ」 彼らの目が、好奇から純粋な尊敬の色へと変わっていく。 私は自分の言葉で、自分の力で、目の前の人々の心を動かしたことに、手応えを感じていた。 湊さんはただ誇らしげに、優しく、その様子を見守っていた。 ◇ インペリアル・クラウン・ホテルで行われている、パーティーの終盤。 私たちがテラスから会場に戻ると、明らかに部屋の空気が変わっていることに気づいた。 それまで私を遠巻きに見ていた人々が、今は尊敬と少しの興奮が混じったような、熱っぽい視線をこちらに向けている。(どうしたのかしら……。あ、あれは) テラスで私と話した建築家たちが、それぞれの輪に戻って私のデザイン哲学について語ってくれているのだ。 先ほどまで私を値踏みするように見ていた別のデザイナーが、名刺を持ってこちらへ近づいてきた。「相沢先生、素晴らしいお話を伺いました。ぜひ、今度ゆっくりお話をさせてください」 すると輪の中心にいた建築界の大御所、片桐先生が私たちの会話に割って入るように言った。「君たち、彼女のデザインの本当の価値が分かるかい? 彼女が作ろうとしているのは、ただの豪華な箱ではない。人が、その中で豊かな時間を過ごすための『舞台』なのだ。最近の見栄えだけのデザインとは、魂が違う。私も大いに感銘を受けた」 彼の言葉は会場の隅々まで、確かに響き渡った。 佐藤が撒いた悪意の種は、本物を見抜くプロフェッショナルたちの言葉によって、完全にその力を失っていた。 見れば佐藤は、公然と恥をかいたために今は会場の隅で小さくなっている。 彼は私の評判が逆転したために、さらに居場所をなくしているようだ。もう誰も佐藤を見ようとしないし、相手にしていない。 少しだけ胸がすっとした。 私はようやく
Last Updated : 2025-10-25 Read more