「……私が流産すれば得をする人間、誰だと思います?前もちゃんと話そうと思ってたのに、あなたは私の話に耳を傾けようとしなかった。一番疑うべき相手を、疑いもしなかった。だから滝沢社長、もう『私のために』なんて言わないで。そんなこと、何の意味もありませんから」祐一が何か言う前に、由奈は背を向けて歩き出した。少し離れたところまで来ると、胸の奥に鈍い痛みが込み上げる。理由もなく悲しくなり、息が詰まるようだった。その後、由奈は看護師長を医局まで呼び出した。自分は里美が犯人だとは思っていない――そのことを、きちんと伝えるためだ。看護師長の顔には、深い落胆が浮かんでいた。「……じゃあ、解雇の件は、もう覆せないんですね?」由奈は返事できなかった。祐一が関わっている以上、自分にどこまでできるのか、確信が持てない。「……わかりました。お時間、ありがとうございました」そう言って、看護師長は去っていった。ナースステーションに戻ろうとしたところで、声をかけられる。「あの……」歩実だった。看護師長は足を止め、戸惑ったように振り返る。「長門先生、何か……?」歩実は医局の方に一瞬だけ視線を向け、それから看護師長の前に立った。「……お母さんの無実、晴らしたいとは思いませんか?」「それは……どういう……」歩実は赤い唇をわずかに持ち上げ、看護師長の耳元で何かを囁いた。看護師長の瞳に驚きが走り、しばらくの間、動揺を抑えられなかった。……滝沢家の本邸。頃合いを見計らい、真由美と将吾は、智宏が奈々美との縁談に同意したことを和恵に伝えた。和恵は二人を見て、静かに問い返す。「中道家は、了承しているんだね?」「中道さんご本人が承諾された以上、ご家族も反対されないでしょう」真由美は千代に視線を向けてから、続けた。「では、一度中道さんを家までお招きして、お食事にするのはいかがでしょう。若い二人がお互いを知るいい機会になります」真由美の隣に座る奈々美は、頬を赤らめ、どこか照れている様子だった。千代は鼻で笑う。「ずいぶんと強引ね。無理やり話を進めているように見えるけど?」「祐一さんが由奈さんと結婚したときだって、決まるのは早かったでしょう?」真由美の一言に、千代の笑みが消えた。彼女は小さく白目をむき、それ以上口を挟むのをやめた。和恵は手にして
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