祐一が病室の外に姿を現した途端、健斗はようやく少し落ち着いた。痩せ細った体を布団の中で丸め、小さな顔は血の気がなく、誰かが近づくこと自体を恐れているようだった。「健斗、ほら……祐一おじさんが来てくれたよ」歩実がそっと手を伸ばし、頭を撫でようとする。だが健斗はそれを避け、くるりと身を翻すと、祐一の胸に飛び込んだ。歩実の表情が一瞬だけ強張り、すぐに困ったような笑みに変わる。「健斗、今は過敏になっていて……私も、警護の人たちも、近づかせてくれないの」祐一はベッド脇に立ったまま、健斗を抱き留めた。眉間にわずかな皺が寄るが、何も言わない。健斗はしがみついたまま、黙り込んでいる。しばらくして、祐一はその小さく頼りない肩に手を置き、腰を落として目線を合わせた。なるべく優しく声をかける。「健斗、怖がらなくていい。おじさんがここにいるよ」健斗は我に返ったように瞬きをし、こくりと頷いた。だが、その瞳には、不安だけが浮かんでいる。歩実は彼の横に立ち、少し寂しそうに言った。「……この間の事故以来、健斗は誰にも心を開かなくて。私にも近づかないのに……あなたには、昔と同じなのね」祐一は静かに立ち上がる。「君は母親だろう。普通なら、君の方に懐くはずじゃないのか?」歩実の胸がひくりと跳ねた。思わず指先を握り締め、声に滲む悲しさを隠せない。「……私にも分からないの。もしかしたら、私を責めているのかもしれない。あの日、私がちゃんと見ていれば……あんなことには……」祐一は答えなかった。視線は、ベッドの健斗に注がれたままだ。布団を掴む小さな手。虚ろな表情。かつてはふっくらしていた頬が、今では同年代の子どもよりも明らかに痩せている。一方で、歩実は頭の先から足元まで整い、疲れた様子もない。彼女がきちんと世話をしていれば、子供がここまで憔悴するのはありえないはずだ。――本当は、子供を粗末に扱っていたのではないだろうか。そんな疑念が、自然と湧き上がる。祐一の探るような視線に、歩実は内心で焦りを覚えた。悟られてはいけないと思い、急いで口を開く。「このところ、仕事が立て込んでいて、健斗に十分向き合えなかったのは事実なの。でも、あなたのそばにいれば……健斗はきっと立ち直れると思う」長い沈黙の後、祐一が口を開いた。「歩実。健斗は……本当に、文昭夫
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