歩実はことさらに誠実そうな顔をつくり、まるで祐一に見せつけるように振る舞っていた。それはあまりに自然で、由奈も一瞬信じそうになる。由奈は小さく笑い、「必要ありません。いずれ真実は明らかになりますから」とだけ残して背を向けた。歩実の表情がわずかに強張る。その瞬間、隣から注がれる祐一の視線に気づき、背筋が凍る。とたんに顔を伏せ、弱々しい声を絞り出した。「祐一……池上先生にあんなに嫌われるなら、来なきゃよかった……」祐一は無表情のまま視線を外し、健斗を抱き上げる。「これからは、あまり彼女に近づくな」その言葉は歩実に向けられたものだった。「……池上先生を庇ってるの?」歩実が一瞬固まり、瞳に冷たい光が過ぎる。由奈を庇ってる?祐一の眉間にしわが寄る。だが彼はその質問に答えず、静かに言った。「彼女は警戒心が強い。深入りすれば傷つくのは君だ。俺は君のためを思って念を押してる」歩実の胸に渦巻いていた疑念は、その言葉で一気に晴れていく。もう不安に思う必要はない――たとえ由奈がどんな手で祐一を惑わせても、最後に勝つのは自分。必ずあの邪魔者を排除し、滝沢家に嫁ぐのだ。……夜更け。由奈が横になって間もなく、外の気配に目を覚ます。真っ暗だった寝室に灯りが漏れ、壁に映る影がベッドへ近づいてくる。由奈はまぶたを閉じ、眠っているふりをした。かつては祐一の帰りを待って、夜通し目をこらしたこともあった。けれど、待っても待っても姿はなく――失望を重ねるうちに、もう待つことさえやめていた。祐一はベッド脇にしばらく立ち尽くしたあと、上着とネクタイを外し、浴室へ消えていく。由奈は身じろぎひとつせず、目を閉じたまま。やがて水音がやみ、祐一が戻ってくる。彼が隣に横たわった瞬間、由奈の体は反射的に強張った。近い――息遣いが耳元にかかるほど。祐一は彼女の睫毛の震えに気づきながらも、何も言わず灯りを落とした。最後まで、その芝居を暴くことはしなかった。どの瞬間に眠りに落ちたのかわからない。目を覚ますと、自分は祐一の腕に抱かれるように眠っていた。そんなこと、これまで一度もなかった。呆然と見つめる先で、祐一はまだ眠っている。これほど無防備に寝顔をさらすのも初めてだろう。緩やかな朝の光がカーテンの隙間から差し込み、彼の
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