由奈は、祐一の腕の中でしばらく固まったままだった。頭が真っ白になり、何も言葉が出てこない。祐一の腕の力が、わずかに緩んだ。その瞬間、由奈ははっと我に返ると、すぐに彼の胸から離れた。そして慌てて話題を変える。「……飲みすぎてるのよ。土屋さんに連絡して迎えに来てもらう」祐一は小さく笑った。その視線が、まっすぐ由奈に向く。「君は……俺が酔ってるって思っても、今の言葉が本心だって、思いたくないんだな」由奈の胸の中はぐちゃぐちゃだった。けれど結局、彼の視線を避けることしかできない。祐一はゆっくり立ち上がり、コートを手に取る。「……じゃあ、酔ってたってことにしておくか」そう言ってエレベーターへ向かおうとした。その背中に、由奈は思わず手を伸ばし、袖をつかんだ。祐一がぴたりと止まる。振り返った彼の目に、かすかな期待が浮かんだが、由奈はすぐ手を離した。「お酒飲んでるんだから、土屋さんが来るまで待って。もしこのあと何かあったら……私が責任取ることになる」引き止めた理由は――未練じゃない。ただ、彼に何かあれば自分が困るから。それだけ。祐一の目に宿っていた光が、ゆっくり消えていく。そして彼は由奈の手を軽く振り払った。「……いい」そのまま歩き出した。由奈はその場に立ち尽くす。エレベーターへ向かう祐一の背中を、ただ見送る。胸の奥が、妙にざわつく。しばらく迷ったあと、由奈は急いで廊下を追いかけた。エレベーターには間に合わず、階段で下へ降りる。外に出ると――ちょうど祐一が車の後部座席に座るところだった。車が動き、赤いテールランプが遠ざかる。それを見届けて、由奈はようやく小さく息を吐いた。少しだけ、肩の力が抜ける。なんでこんなに落ち着かないのだろう。きっと――祐一に何かあったら、滝沢家に説明できないから。それだけだ。……翌朝。由奈が目を覚ますと、スマホにメッセージが届いていた。送信者は真里。由奈はすぐ内容を確認する。【東山家の奥様から聞いた話だけど、娘さんは米林圭介さんと一緒にいるそうよ。両家の結婚はもう発表されたって。披露宴は来月初めらしいわ】由奈はしばらく画面を見つめた。そして短くお礼を返信し、スマホを置く。やっぱり、凪紗は米林家にいる。しかも、結婚のことも公表された。両家が合意している以上――部
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