歩実の目に、あからさまな苛立ちが走った。「あなたたち、誰?気安く話しかけないで」その言葉に、先頭に立っていた短髪の女の笑みがすっと消える。次の瞬間、何の前触れもなく手が振り上げられ、乾いた音が留置場に響いた。歩実は勢いよく床へ倒れ込む。はっと我に返ったときには、すでに三人に取り囲まれていた。短髪の女が歩実の髪を乱暴につかみ、無理やり顔を上げさせる。「ここがどこだか分かってるの?その態度はないんじゃない?」「……ひ、人違いじゃないの?」三人の目に宿る敵意を察し、歩実はとっさに声の調子を落とした。「人違い?してないよ。あんた、長門歩実でしょ?」女は手のひらを滑らせ、顎を強くつかむ。「自分が何してきたか、忘れたとは言わせないよ」肩がびくりと震える。歩実は女を突き飛ばした。「何のこと?ここは警察署よ?手を出したら、あなたたちだって無事じゃ済まないわ!」少し太った女が腕を組み、鼻で笑う。「へえ、ここが警察署だって分かってるんだ。前にあんたも、同じことやらせたくせに」「……どういう意味?」一瞬、思考が止まる。だが、短髪の女は考える隙を与えなかった。鋭く蹴りが入る。「っ……!」腹部に衝撃が走り、息が詰まる。続けざまに拳と足が落ちてきた。「やめて……!」歩実は丸くなり、必死に身をかばう。だが三人は容赦しない。その間、壁の隅にあるはずの監視カメラは、いつの間にか電源が落ちていた。やがて、歩実がほとんど動かなくなった頃。「何をしてる!」当直の警察官が駆け込んできた。床に横たわる歩実は、全身が焼けつくように痛む。耳鳴りがひどく、周囲の声が遠く霞む。骨が折れたのではないかと思うほどの激痛。額の端から、熱い液体が頬を伝って流れていく。――痛い。ただ、それだけがはっきりしていた。そのとき、ふいに脳裏にある名前が浮かんだ――池上浩輔。……一方その頃。由奈は警察署を出たあと、真里の招きで麻雀の席へ向かった。集まっていたのは、沙也加と麻央。初めて触る牌に、由奈は少し緊張していたが、真里が一通り教えると、二、三局で流れをつかんだ。気づけば、かなりの額を勝っている。「初心者ボーナスってやつね」麻央が笑う。「これが本気のレートだったら、今ごろ私たち、財布が空っぽになっちゃったわよ」沙也加が八筒を捨て
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