由奈は、祐一のあまりにも真っ直ぐで深い視線に耐えきれず、先に目をそらした。「私のいいところ……ほかにはないの?」「あるよ」「何?」祐一はさらにわずかに距離を詰め、彼女の耳元に唇が触れそうなほど近づいた。「頑固で、ほんと放っておけないところ。すぐ俺を突っぱねるし、気も強いし、挙げ句の果てには噛むし」思わず言葉に詰まり、由奈は彼を押し返した。「……どういう意味、それ」祐一は吹き出すように笑う。「どうも何も、そういうところが好きなんだよ。頑固なところも。いつも俺を避けようとするところも。気が強くて、噛みつくところも」由奈は一気に顔が熱くなり、耐えきれず視線を逸らす。これ以上この話を続けるのは危険だと判断し、無理やり話題を変えた。「そういえば……岩島のことだけど、あれ、結納にするなんて、一言も教えてくれなかったじゃない」「あれは母が用意してくれたものだ」その言葉に、由奈は思わず祐一を見上げる。「でも……あの人は……」千代が自分をどれほど嫌っているのか、知らないわけじゃない。それなのに――結納品を用意してくれるなんて。「母は君を受け入れてくれたんだ」祐一はやさしく彼女の頬に触れながら言った。「江川市でのこと、すまなかったと彼女の伝言を預かっている。あのときは、確かにやりすぎたって」少し間を置いて、静かに続ける。「これから先、俺たちの結婚に口出しはしないってさ。俺たちが何を決めても、君が何を望んでも、もう誰にも止められない」由奈は唇を噛み、彼の手をそっと外した。「そうだとしても……まだ婚約しただけよ。絶対結婚するみたいな言い方しないで」普段なら、この話になると祐一は少し寂しそうな顔になる。けれど今日は違った。隠しきれない笑みが、そのまま目元に浮かんでいる。「まあ、それはそうだが」実は、祐一は千代から聞かされたのだ。二人の離婚手続きは、そもそも完了していなかったと。つまり――由奈はまだ、祐一の妻のままだということ。二人は本当の意味では、まだ離婚していないのだ。今回の婚約も、その先の結婚式も。かつて挙げられなかった結婚式の埋め合わせだと思えばいい。……栄東市に、中道家の令嬢が婚約するという知らせはすぐに駆け巡った。やがて、地元の資産家や名士たちが、こぞって信三のもとへ祝辞を届け寄越した。婚約パーティ
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