由奈は少し黙り込んでから、紬を見た。「本当に友達って呼べる人は、そんなに多くないんです。たぶん……二、三人くらいかな」紬は目を丸くする。「なんか少ないね?私なんて地元だったら、少なくても十人や二十人は思い浮かぶけど」由奈は静かに問い返す。「みんな、本当に心から信頼できる友達ですか?」「それは……どうだろ」紬は少し言葉に詰まった。昔から友達には困らなかった。けれど、それが自分の家の背景による部分も大きいことくらい、彼女だって分かっている。「正直ね、私も友達ってどんなものなのか、よく分からないの」由奈は肩をすくめた。「難しく考えなくてもいいと思いますよ。自然と気が合う人――言い換えれば、価値観がちゃんと重なる人とか。あとは、あなたが困ったときに手を差し伸べてくれる人」紬は一瞬ぽかんとして、それからじっと由奈を見つめた。「じゃあ……お義姉ちゃんって、まさにそうじゃない?」「私?紬さんに何かしてあげた覚えはないですけど……」紬はにっこり笑う。「江川市にいたとき、私を泊めてくれたじゃない。それって十分でしょ?」由奈は少し困ったように、それでもどこか優しい目で紬を見てから、椅子の向きを変え、机の上の書類を整え始めた。「あなたがそう思うなら……そういうことにしておきましょう」紬は少し考えてから、ぽつりと続けた。「だったら……白石さんも、そうかも」由奈は意外そうに振り向く。「え?そんなに仲良くなったんですか?」紬は言葉に詰まり、わざと視線を逸らした。「別に。仲がいいとかじゃないよ。ずっとあんな感じだし。ただ……昨日はちょっと助けてもらっただけ」由奈はくすっと笑ったが、それ以上は聞かなかった。一方、中道家の本家では――執事が税務署の担当者を見送ったばかりのところへ、智宏が戻ってきた。急ぐ様子もなくリビングへ入ると、信三は湯のみを持つ手を止め、ゆっくり視線を上げた。「長年やってきて、いまさら税務で不備が出るとはな。智宏、会社の管理を疎かにしてないか?」智宏は落ち着いた様子でソファに腰を下ろす。「去年までは問題ありませんでした」「ではなぜ今年になって問題が出たんだ?」信三の顔は険しい。「もし中道家が脱税などという不祥事を起こしたとなれば、栄東市での信用も地に落ちるぞ」智宏は静かに言った。「原因について、僕も知
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