祐一はまぶたを上げて悠也を見た。その顔には、驚きがはっきりと浮かんでいた。「つまり、徹也は中道家と血縁関係がないということか?」「そうだ。例の、花織が海外で出産したって件を調べてただろ。そこから過去の病歴を全部たどってみたんだ。本当は妊娠時期を知りたかっただけなんだけど――思わぬ大ネタが出てきてさ」悠也はそう言ってスマホを差し出し、祐一の前に置いた。祐一が画面に目を落とす。表示されていたのは――花織の最も古い健康診断記録だった。ロキタンスキー症候群。つまり生まれつき子宮や腟がなく、あるいは一部が欠損しているといった先天性の疾患だ。「花織はそもそも妊娠できない体だった。だから徹也は彼女の子じゃないし、当然、中道家の跡継ぎでもない。ただ――どこから来た子なのかはまだ分かってない。海外出産に関わった使用人が事情を知ってるはずだ」その言葉を聞いて、祐一はしばらく何も言わなかった。……ICUの前で、秀雄は長いあいだ立ち尽くしていた。やがて――秀明と美雪が、信三を伴って病院に姿を現す。「お父さん?」秀雄が歩み寄る。信三はその場に立ち止まり、両手を杖に重ねたまま、固く閉ざされたICUの扉をじっと見つめていた。濁った瞳の奥には、感情がほとんど読み取れない。先に口を開いたのは美雪だった。「靖彦の容体は?」秀雄は静かに首を振る。「まだ危険な状態から脱していないそうだ。引き続き経過観察らしい」美雪は深く息をついた。「徹也のことだけど……花織さん、本当によくここまで隠し通してたわね」花織は家族全員を欺いていた。信三でさえ例外ではなかった。信三はこれまで、徹也が美羽や靖彦と同じように遺産争いのために動いているのではないかと疑ったことがあった。また、花織と靖彦の関係が明るみに出たあとには――花織は以前から不貞を働いていて、徹也は靖彦の子なのではないか。そんな可能性すら考えていた。だがまさか――徹也が中道家とまったく血のつながりを持たないとは、思いもしなかった。信三は杖を強く床に打ちつけた。鈍い音が、静かな廊下に響く。「……いい。とりあえずICUから出てくるのを待とう。それより、智宏の行方は分かったのか?」秀明は一瞬言葉を詰まらせ、脇に垂らした手を強く握りしめた。「……まだです」信三の声が低く落ちる。「秀雄。すぐに人を動
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