午後七時。由奈がチャリティーパーティーの会場へ姿を現した瞬間、周囲の視線がふっと集まった。深みのあるボルドーのファーを肩に掛け、その下には黒のベルベット素材のマーメイドドレス。華やかな来場者たちの中にあっても、彼女だけはどこか空気が違う。静かなのに目を引く、美しく冷えた炎のようだった。会場へ足を踏み入れた由奈は、まず祐一の姿を探した。その時――「……由奈?なんでここにいるの?」横から飛んできた声に、由奈が振り向く。奈々美だった。奈々美は明らかに動揺していた。今夜のパーティーは表向きこそチャリティーイベントだが、実際には将吾と影山家が祐一を陥れるために用意した罠だ。完全招待制で、由奈には招待状が届くはずがない。――なのに、彼女がここに立っている。奈々美の胸の奥がざわつく。まさか、祐一を追って来たのか?そんな奈々美の不安をよそに、近くにいた女性たちがひそひそと囁き始めた。「あの人が池上さん?滝沢社長の奥さんって人?」「ええ。弟が性的暴行で拘束されたってニュースの……よく顔出せるよね」それを聞いた奈々美は、口元を歪めた。「由奈、もしかしてまだ祐一さんに未練があるの?離婚手続きの最中だってのに、よく追いかけて来れたよね」「え、あの二人は離婚するの?」「滝沢社長、一途に奥さんを愛してるって噂だったのに。結局、奥さん側が執着してただけ?」嘲るような笑いが広がる。奈々美も満足するように鼻で笑う。けれど由奈は怒るどころか、むしろ薄く笑った。「誤解しないで。今日はあなたのお母さんに用があって来たの」奈々美の表情がぴたりと止まる。「……え?」「そんなに驚くことはないでしょ?それともお母さん、私の相手をするのは気まずいの?」由奈は眉を上げた。「別にいいけど。こっちから探しに行くまでだから」「ちょっと、待ちなさい!」奈々美が慌てて前へ出る。「母は忙しいの。会いたいからって会えるわけないでしょ!」「いや、会えるよ」由奈はさらりと言った。「だって、私はまだあなたの義姉なんだから」「祐一さんとはもうすぐ離婚するでしょ!」「そうよ、でも離婚が成立する前に、私はあなたの義姉であることは変わりはないわ」にこやかなまま返され、奈々美は顔を引きつらせた。「昔から思ってたけど、あなたって本当に図太い女だね」「祐一
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