翌朝、心愛は部屋を出ると、リビングの様子をそっと覗き込んだ。智宏はダイニングテーブルの前でコーヒーを淹れている。ついでに朝食まで用意してくれているようだ。昨夜、あんなことを言ったのは智宏だったのに、なぜか一晩中眠れなかったのは彼女のほうだった。心愛は深く息を吸い、意を決してリビングへ出ていく。智宏は視線を上げ、椅子を引いて座る彼女をさりげなく見ると、焼きたての卵トーストとサラダを彼女の前へ置いた。「僕が作れるのはこれくらいです。よかったらどうぞ。明日には家政婦さんが来ます」「え、本当に家政婦さんを雇ったんですか?」それもそうだ。智宏たちの身分を考えれば、家政婦を一人雇うくらいのお金は持っているのだろう。「家政婦を雇うこと自体は二の次です。ただ、この家に他の誰かがいるだけで、あなたも楽に過ごせると思って」心愛は思わず固まった。彼は、自分が懸念していることに気づいたのだ。智宏が勘違いしないよう、慌てて説明する。「誤解しないでください。中道さんが紳士なのは分かっていますし、警戒しているわけでもないので……」説明すればするほど、なぜか妙な方向へ進んでいる気がした。これではまるで、彼と一つ屋根の下で暮らすことに抵抗がないと認めているようなものではないか。智宏はスプーンでコーヒーをかき混ぜながら、指先でカップの縁に軽く触れた。そして顔を上げる。「僕は完璧な紳士というわけではありません」心愛の動きが止まった。智宏の喉仏がわずかに動く。彼は視線を逸らすと、ゆっくりとコーヒーカップを持ち上げた。「あなたも、あまり無防備になりすぎないほうがいいです。僕は一応、男ですから」心愛はぼんやりしたまま、卵トーストを手に取り、一口かじった。耳の先が、抑えきれず赤く染まる。彼を一人の男性として意識してしまったからこそ、一晩中あれこれ考えてしまったのだ。……昼頃、智宏が出かけたあと、心愛は由奈のもとを訪れた。由奈はジュースを心愛の前に置く。「昨日の夜は本当に心配したんですよ。何かあったのかと思いました」心愛はすぐには返事をしなかった。由奈は顔を上げると、彼女が明らかに寝不足で、どこか上の空になっていることに気づく。「元気がないですね、何かあったんですか?」「え?」心愛はそこでようやく我に返り、
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