由奈は感傷に浸っている父を見つめ、智宏と視線を交わした。そして立ち上がると、秀明のそばへ歩み寄る。「お父さん、落ち込まないで。お母さんもきっと、そう遠くないうちに意識が戻りますから」秀明は由奈の手をそっと握り、それから智宏へ視線を向けた。「お母さんには、私と由奈がついてるから、君は心配しなくていい。せっかく古澤さんと一緒に帰ってきたんだ。ちゃんと彼女のそばにいてやれ」智宏は視線を伏せた。「しかし……」「手術まではまだ1ヶ月以上ある。どうしても気になるなら、古澤さんを連れて栄東市へ戻って、少しゆっくり過ごしてきてもいい」秀明は智宏の言葉を遮ると、どこか困ったように続けた。「会社のことは、いつまでも君の叔父さんに任せておくわけにもいかないからな」智宏は父を見たあと、由奈へ視線を移した。由奈は小さく頷き、安心するよう目で伝える。……ホテルを出たあと、智宏は駿介を呼び止め、少し離れた場所で話をしていた。心愛は、2人の背中をちらりと見送ってから、由奈へ向き直った。「お母さまのこと、お兄さんから聞きました。私たちがここに残って、お母さまの看病をしてもよかったのに……」由奈はふわりと微笑んだ。「大丈夫ですよ。兄はずっと家のことや仕事で忙しくしていたから、父も少しくらい休んでほしいんだと思います。それに、せっかく古澤さんを連れて帰ってきたのに、母の看病までさせるわけにはいかないでしょう?」そう言って、由奈は冗談めかして笑った。「まだ正式に家族になったわけでもない未来のお義姉さんに、いきなり義理のお母さんの世話をお願いするなんて……それじゃ、あまりにも人使いが荒いじゃないですか」心愛が思わず小さく笑う。「それに、母の世話をする人手なら足りています。私も父もいますし、藤堂さんもいます。それに、専門のスタッフも何人もついてくれていますから」「……そうですか、分かりました」心愛は小さく頷き、わずかに目を伏せた。実は、智宏とともに帰国するまでの間、彼女は何度もこれからのことを考えていた。智宏の実家が、いわゆる普通の家庭ではないことは以前から知っていた。本人は「両親とも気さくで、付き合いやすい人だから」と話していたが、それでも育ってきた環境があまりにも違えば、どうしても気後れしてしまう。けれど――実際に秀明
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