ヤクモヘルスグループと病院が正式に提携するようになってから、状況は大きく変わった。病院でもヤクモの特効薬を扱えるようになったのだ。しかも、輸入薬よりはるかに安い。これまで高額な薬代を払えず、治療を諦めざるを得なかった町のがん患者たちの中にも、無理なく治療を続けられるようになった人が増えた。それだけに、3年前の出来事は、誰にとっても突然のものだった。ある日、院長が突然、ヤクモの特効薬の販売価格を引き上げるよう指示したのだ。当初、咲子たちはヤクモ側の方針が変わったのだと思っていた。ちょうどその頃から、ヤクモの担当者が、これまでのように納品後の精算や在庫確認のため病院へ足を運ばなくなっていたからだ。とはいえ、薬はこれまでどおり納品日にきちんと届いていた。そのため、職員たちも特に疑問を抱かなかった。院長の指示に従って販売価格を引き上げたあともしばらくは、何事もなく業務が続いていた。以前より数百円高くなったとはいえ、患者の家族も、なんとか支払える範囲だった。ところが、咲子が薬品管理の帳簿を引き継いでから、少しずつ違和感を覚えるようになった。「この前、私たちが棚卸しをしたとき、在庫数と帳簿に書かれた数が合わなかったけど、薬の入庫と出庫は全部ちゃんと記録されていました。あれは……どういうことなんですか?」紬がわずかに身を乗り出した。咲子は一度、言葉を選ぶように息を吸った。「あなたたちが確認した帳簿そのものは、本物だったからです」「え?」「ヤクモから納品された薬の数量は、帳簿に正しく記録されていました。だから、帳簿だけを見れば、入庫数と出庫数に矛盾はなかったんです。問題は……帳簿に載っていない薬が、別に存在していたことです」紬が眉を寄せる。「帳簿に載っていない薬……?」「そうです」咲子はゆっくりとうなずいた。「ヤクモから納品された薬とは別に、どこからか持ち込まれた薬があったんです。見た目は本物とほとんど変わりませんでした。包装もよく似ています。でも、中身はまったく別物でした」紬の顔から血の気が引いた。「まさかそれって……偽造薬?」咲子は小さくうなずいた。「そうです」「うそ!」紬は思わず口元を手で覆った。隣にいた倫也をちらりと見てから、声を落とす。「じゃあ……病院が患者さんに売っていた薬っ
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