そして、王立アカデミー。 事件から、わたくしへの風当たりは、もはや逆巻く暴風雨と化していた。「見まして? あの方……“シャーデフロイの魔女”よ」「王太子殿下にあのような前代未聞の無礼を働き、謹慎にすらならないなんて……」「よほど、後ろ暗い力をお持ちなのね。いえ、目を合わせるのすら恐ろしいわ」 廊下を歩くだけで、空気がシンと静まり返る。今まで牽制しあっていた宰相派の令嬢たちが、海を割る聖者の奇跡のように避けていく。 す、すごい! これぞまさしく、悪役令嬢としての威光!「でも、さすがにこれは……寂しいかも」 というか、なんで味方であるはずのシャーデフロイ派の子たちまで、より一層遠巻きになっているの? ねぇ、味方じゃないの? うー、まあいいわ! これも作戦のうちよ! きっと、そう! と、無理やり気を取り直そうとしたその時。「お待ちしておりましたわ、ベアトリーチェ様っ!」 暗雲に差し込む一筋の陽光、明るく、ぱたぱたと駆け寄ってくる影が一つ。噂の的、ルチアだった。 周囲の視線など気にもせず、わたくしの手を取って、ぶんぶんと子犬の尻尾みたいな勢いで振る。「大変だったのですね! でも、ご無事でよかったですぅ!」 ちょ、ちょっと慣れ慣れしくないからしら!? 元庶民ってこんなものなの!?「え、あ、はい。あの、わたくしたち、そこまで親しい間柄でしたかしら?」「バージル殿下が、すっごく怒っていらっしゃいましたけど、後でローラント様がこっそり教えてくださったんです! 『あれはきっと、ベアトリーチェ様が、私や殿下の身を案じて、体を張って警告してくださったに違いないのだ』って! なんて勇敢で、お優しい方なのでしょう!」「ば、バージル殿下がすっごく怒ってた……!?」 ち、ちがう! 断じて違うのよ、ルチア! その解釈は、もはや詩人の幻想の域に達しているわ! ローラント殿、護衛の
Terakhir Diperbarui : 2025-10-04 Baca selengkapnya