明里は頷いた。「ええ、わかった」潤は彼女を一瞥すると、その答えに満足したのか、表情をずいぶん和らげた。明里は言った。「もう帰って」「今夜は帰らない」潤はそう言うと、「シャワーを浴びてくる」と続けた。それを聞いて、明里はさっと立ち上がり、彼の前に立ちはだかった。「潤、お願いだから帰ってちょうだい」それを聞いて潤は彼女を見つめた。普段は厳格で隙を見せない男もこの時の眼差しは、どこか優しさが宿っているようだった。明里は目を逸らし、まつ毛を震わせた。「私を困らせないで、お願い」潤は数秒黙り込んだ後、口を開いた。「俺が泊まると、なぜお前が困るんだ?生理中なのはわかってる。手出しはしない。ただ……」「だめ。私たちはもう離婚の話を進めているのよ。今さら体の関係を持つこと自体が無理なの」潤はあたりを見回して言った。「じゃ、ソファで寝るよ」明里は不思議そうに尋ねた。「それなら、ここに泊まる意味なんてあるの?」潤は少し苛立ったような、それでいてどこか恥ずかしそうな表情を浮かべていた。明里は自分が見間違えたのかと思った。潤は言った。「俺がそんなことしか考えていないとでも思うのか?」明里は深く考えず、ただ言った。「私たちは離婚するのよ。あなたがここに泊まるなんて筋が通らないじゃない。それにソファで寝るなんて……帰ればベッドで眠れるのに、どうしてそんな思いまでしてここに?」「帰りたくないんだ……」「お願いだから」潤が言い終わる前に、明里は手を差し伸べて言った。「私を困らせないで」彼女の表情を見て、潤はそれ以上何も言わず、自分の服を手に取って外へ向かった。ドアの前に立ったところで、彼は振り返った。「明里、離婚のこと……もう一度話し合えないか?」明里は心底驚いた。「何言ってるの?話し合うことなんて何も変わらないじゃない?もう決めたことでしょ?」そう言った後、彼女ははっとした。おそらく、陽菜の身に何かあったのだろう。だから潤はこんなことを言い出したのだ。そうでなければ、潤がこの結婚生活をやり直そうとする理由などないだろうと、彼女は思った。「もう、話し合う余地はないのか?」潤は明里を見つめ、以前よりもずっと穏やかな声で言った。「もし……俺に何か悪いところがあったのなら、改めるから」明里は呆然とした。
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