明里はむやみに疑いたくなかった。ましてや、悪意をもって人のことを勘ぐるなど、もってのほかだった。しかし今、目の前にはピルという動かぬ証拠がある。そもそも、陽菜が潤の義理の妹になる相手だという以前に、たとえ普通の男女の友人関係だったとしても、こんなものを男性が女性の代わりに買ってやるなど、その関係はきっと友達以上なのだろう。そして、どれくらいの時間が経っただろうか。明里はようやく冷静さを取り戻したが、自分の手が微かに震えていることに気づいた。時間を見ると、すでに夜の九時を過ぎていた。彼女はその袋を助手席に置いた。すると、スマホが鳴った。画面に表示されたのは、意外にも陽菜の名前だった。もともと明里は二宮家を出てから陽菜と会う機会はなかったが、潤が関わると、彼女はいつも現れるようだった。しかし、今の明里は、もう昔の自分ではないのだから、そう簡単には傷つけられるはずもないのだ。そう思って、彼女は電話に出た。陽菜は単刀直入に切り出した。「明里さん、車の中に薬の入った小さな袋ない?あれ、潤さんに頼んで買って来てもらったんだけど、あなたの車に置き忘れたって言うから」明里は落ち着いた声で答えた。「ええ、あるよ」「よかった、ちょうど必要だったの」陽菜は笑いながら言った。「悪いけど、明里さん、今から届けてもらえないかしら?」「配達代行を頼むから」明里は彼女とこれ以上話したくなかった。「じゃあ、そういうことで」「あ、ちょっと待って」陽菜は明里を引き留めた。「明里さん、いつ戻ってくるの?潤さんを一人で寂しくさせておいて、平気なの?あの年頃の男の人って、みんな精力的なんだから……」明里は鼻で笑った。「ずいぶん詳しいじゃない」陽菜は続けた。「潤さん、よくお酒を飲むでしょ。私にできることなんて、彼のお世話をすることくらいだから。この間も彼が酔っ払った時、私が……とにかく、明里さん、早く帰ってきてくれないかしら」明里には、彼女の言葉に込められた自慢げな響きと、潤との親密さをそれとなく誇示する意図が手に取るように分かった。実のところ、明里はこれまで、潤がたとえ陽菜に好意を寄せていたとしても、彼は道徳や倫理を重んじる人間だから、彼女と一線を超えることはないはずだと信じていた。それに、もし潤が陽菜と関係を持ったのなら、もはや自分
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