「君が俺を選んでくれたんだ」と裕之は真顔で言った。朱美はプロポーズを断ったばかりだから、これ以上冗談を言って彼のプライドを傷つけるわけにもいかなかった。プロポーズの一件は、そこで幕引きとなった。二人の間の秘密として幕を閉じた。雲海レジデンスに戻ると、今度は娘が結婚について訊いてきたのだ。朱美は逆に明里に訊いた。「私に結婚してほしいの?」正直に言えば、心の奥底の我儘な子供のような気持ちに従うなら、明里は朱美に結婚してほしくなかった。今、朱美はやっと見つけた自分の母親だ。でも結婚したら、朱美はまず裕之の妻になる。法的には、裕之が朱美にとっての配偶者……第一順位の身内になる。でもそれを抜きにして客観的に見れば、朱美のそばには、彼女を気遣い、愛し、守ってくれるパートナーがいるべきだ。それは明里でもいいけれど、明里が四六時中ずっと一緒にいられるわけではない。しかも今は潤と一緒にいて、宥希もこれから成長して手がかかる。将来、誰が朱美のそばにいて支えるのか。「お母さんには幸せでいてほしいの」明里が本心から言う。「お母さんと富永さんが一緒にいるなら、私は全力で祝福するわ。それに、富永さんはとても良い方だし、お母さんを大切にしてくれてる」朱美は優しく微笑む。「じゃあ……数年後に考えるわ」明里がさらに説得しようとすると、朱美が逆に切り込んできた。「あなたはどうなの?二人でいつまで付き合うつもり?結婚する時は、盛大に祝ってあげるつもりよ」潤と明里の最初の結婚式は、いわゆる結婚式と言っても、両家の親戚だけを呼んだ小規模で地味なものだった。だから多くの人が、明里が潤の妻だと知らなかったのだ。今、三年以上経って、もし二人が再婚するとしても、明里は特に結婚式を挙げるつもりはなかった。子供ももうこんなに大きいのに、今さらウェディングドレス?でも朱美の考えは違うようだ。「私の大切な娘が嫁ぐんだから、当然華々しく送り出して、世間の人たちに、あなたの幸せを見せつけてやりたいわ。それに、この何年間で私が知人に出したご祝儀がどれだけあると思ってるの。ご祝儀を回収しないと、割に合わないもの」ご祝儀の回収なんて建前で、金額のことなんて気にしていないことは明白だ。ただ娘のために最高の結婚式を挙げたいのだ。豪華で盛大な、誰もが羨むよ
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