「どうしたの」明里はそっと手を伸ばし、彼を自分の隣へと引き寄せた。「……昔、お前がたった一人でどれだけ苦労したのかと思ったら、なんだか急に、胸が苦しくなって」明里は愛おしさが込み上げ、彼の広い胸に潜り込んだ。「じゃあこれからは、いっぱい私に優しくしてくれないとね」「うん」潤の柔らかな口づけが、明里の髪の上に落ちた。「まだまだ、全然足りないくらいだ」「ふふっ。じゃあ、これからは思う存分わがままを言わせてもらうからね」「どれだけわがまま言ったって構わないさ」潤は明里の小さな手を取り、その指先にそっと唇を押し当てた。「俺がその程度のことで怒らないってこと、まだわかっていなかった?」「本当に、愛想を尽かしたりしない?」「絶対にしない」「今はそう言ってくれても、先のことなんて誰にもわからないでしょ」明里は意地悪く言った。「おじいちゃんになったら、若い女の子に目移りするかもしれない。男の人って、何歳になっても若い子が好きだって、よく聞くじゃない」潤は呆れたように吹き出した。「一体どこからそんな話を持ち出してきたんだ。俺が若い子好きなら、どうしてわざわざお前と結婚したんだよ」「だって今の私は、若い子と同じくらい可愛いもの。でも、十年後はどうなっているかわからないじゃない」「十年後も、ずっと可愛いよ」潤は真剣な声で言った。「俺の言葉、信じていないの?」「先のことなんて、誰にもわからないでしょ。今こうして、あなたの隣にいられれば、私はそれで十分幸せよ」「そういえば、ふと思ったんだけど。啓太のあのやり方って、案外悪くないかもしれないな」「何の話?」「あいつは自分に前科があるから、なかなか信用してもらえない。でも、俺には何の前科もないのに、どうしてこうも信じてもらえないんだろうって。だからいっそ、俺も全財産をお前に譲渡しようか」明里は思わず吹き出した。「別に、信じていないわけじゃないわよ。それに、私はあなたからもう十分すぎるくらい、たくさんのものをもらっているもの」「じゃあ、どうして永遠を信じてくれないんだ」「信じていないんじゃなくて、言葉の約束より、二人で今の暮らしを一日一日大切に積み重ねていければ、それでいいと思っているの。先のことをわざわざ形にしなくてもね。おじいちゃんとおばあちゃんになっても、こうして手を
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