「裕之」と朱美が両手を小麦粉で真っ白にしたまま声をかけた。「ちょっと助けてもらえないかしら?」裕之はわずかに眉を上げた。「何してるんだ?」「お母さんが、皮から手作りで餃子を作ろうって言い出して」明里が補足するように説明する。「でも、生地を練るのって意外とコツがいるみたいで。私たちじゃ、どうにも上手くいかなくて……」「代わるよ」裕之は手早く上着を脱ぐと、手慣れた様子で袖をまくり上げた。朱美が少し意外そうに首を傾げる。「あら、できるの?」「ああ、できる」手を洗い、戻ってきた裕之が短く答えた。「若い頃、何度かやったことがあるからな」「知らなかったわ」「俺たちが一緒になってから、家で餃子を作る機会なんてなかったからな」裕之はボウルの中の粉に指を沈め、感触を確かめながら言った。「……いや、一度だけあったか。だが、あの時は市販の皮を使ったんだったな」「そうそう、よく覚えているわ。あの時、裕之が包んだ餃子がすごく綺麗だったから」「生地を練るのも、実は得意なんだ」要領を掴んでいる彼にとって、それは簡単だった。裕之が少しばかりの打ち粉を足し、何度か力強くこねると、それだけで生地は見違えるようになめらかさを増していく。ボウルの縁にこびりついた粉まで丁寧に巻き込み、一つの塊へとまとめ上げると、最後には彼の手も、ボウルも、そして作業台も、少しも汚れていない、見事な手際だった。「すごいわ!」朱美は思わず感嘆の声を漏らし、感心して見入っている。宥希は小さな生地の切れ端を分けてもらって、手のひらで転がして楽しそうに遊んでいた。潤と明里は顔を見合わせ、その光景に自然と笑みがこぼれた。そこへ、家政婦も戻ってきた。家族全員で手分けして作業を進めると、瞬く間に美味しそうな餡ができあがり、いよいよ皮を伸ばして包む工程に移る。皮を丸く伸ばす作業にも、コツが必要だった。朱美もそれなりにこなしてはいるが、その仕上がりはお世辞にも綺麗とは言えなかった。一方、裕之の手から生み出される皮はまるで別物だった。どれもが綺麗な円を描き、その厚みも均一に整えられている。明里も挑戦してみたものの、見た目以上に難しいらしく、何度繰り返してもいびつな形にしかならない。潤も似たようなもので、普段の料理では手際の良さを見せる彼も、餃子の皮という
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