河野家のたった一人の、大事な妹だ。あいつのせいで、悲しい思いをさせるわけにはいかない。啓太という男は、これまでずっと女に甘やかされて生きてきた。しかも、目に留まった女なら誰にでも手を出すような軽薄な男だ。そんな男に、大切な妹を渡せるはずがなかった。「わかったって」優香はのそりと起き上がり、ぼさぼさの髪を手ぐしで軽く整えた。「お兄さん、それで電話してきたの?」「ああ、危うく本題を忘れるところだった」と、隆は話を戻した。「増田啓太から電話があってな」「彼が?何の用で?」「俺を説得して、二人の交際を認めさせてほしいそうだ」「それで、説得されたの?」「されるわけないだろ」と、隆は間髪入れずに答えた。「電話したのは、これからはあいつと一切関わるなと釘を刺すためだ。わかったか?」「えーっ?」優香は不満げに眉をひそめた。「でも、おかかとこんぶに会いに行きたいんだけど」妹がどれほどあの子たちを溺愛しているか、隆には痛いほどわかっていた。母親に動物アレルギーがあるせいで、実家では飼えないのだ。こうなるとわかっていたなら、実家以外の場所で、何匹か飼わせてやればよかったとすら思う。「増田に話して、おかかとこんぶをこっちに引き取ればいい。近くにマンションを持ってるだろ?そこに住まわせておけば、会いに行くのも楽じゃないか」「いいの?」優香の顔がぱっと明るくなった。「それなら、もう彼の家に行かなくて済む!」「そうしろ。あなたから話してみろ」「うん、わかった」優香は素直にうなずいた。「他に何かある?」「ない。ちゃんと起きてご飯を食べろ。朝飯を抜くと胆石になるぞ!」「わかってるってば!」優香はベッドから這い出し、手早く顔を洗ってから朝食をとった。お腹がいっぱいになったところで、啓太に電話をかける。「もしもーし、うちの兄がおかかとこんぶをうちで飼っていいって。迎えに行ってもいい?」スマホの画面に優香の名前を見つけた瞬間、期待に膨らんでいた啓太の胸は、その無邪気な一言でたちまち萎んでしまった。「……連れていくつもりか?」「だって、別れたのにしょっちゅうお邪魔するのも悪いし。新しい彼女ができたとき、変な誤解をされても困るから」「他の女と付き合う気はない」「でも、もしものこともあるじゃない。念の
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