現れたのは見たこともない少年だった。栗毛色のくるくるとカールした髪に大きな瞳……。ホセだ! きっとホセに違いない!「……誰ですかね? あの美少年は」ボソリとウィンターが呟く。ウィンターの口から美少年……何故か鳥肌が立ってしまった。「きっと彼はホセよ。ベロニカの愛人」「ええええ! むご!」大声を出すウィンターの口をおもいきり押さえつけた。「バカッ! あの少年に気付かれたらどうするの!? バレたら何もかも水の泡じゃないの!」口元を押さえつけられたウィンターはコクコクと無言で頷く。「いい? 絶対に何があっても大きな声を出したら駄目よ? 分かった?」ウィンターの口を押さえつけながら念押しすると、ようやく私は彼を解放し、ホセの姿に注目した。ホセはバルコニーへ静かに近づき、黄色いスカーフがくくりつけてあるのを見ると、嬉しそうに笑みを浮かべて手すりを乗り越え、バルコニーに降り立った。「どうやら部屋の中に入ろうとしているようですね」ウィンターが話しかけてくる。「ええ、そのようね……」イライラしながらホセの様子を伺う。それにしても肝心のラファエルが姿を見せない。一体どうしたというのだろう?「ゲルダ様。何苛ついているんですか? ひょっとしてカルシウム不足ですか?」喧嘩を打っているようにしか聞こえないウィンターに、私の苛立ちは更に募ってくる。「ラファエルがまだ来ないのよ。一体どうしたのかしら……」ホセはついに窓を開けて部屋の中へ入ってしまった。「あ! 部屋に入っていきましたぜ!」「うるさいわね! そんなの分かってるわよ!」その時――ガサガサガサッ!!足音を立てながら何者かがこちらに向かって走ってくる。ひょっとすると……。期待に胸を膨らませ、木の陰に隠れながら足音の方向を振り返ると、バルコニーへ向かって一目散に駆けてくるラファエルの姿が目に飛び込んできた。やった! ラファエルッ! 来てくれたのね!?ラファエルは隠れている私達には気付かず、バルコニーへ駆け寄り、そのままためらうこと無く手すりを乗り越えて、窓を開けて部屋の中へ飛び込んでいき……。「イヤアアアアッ!!」「うわあああっ!!」男女の叫び声が部屋の中から聞こえてきた。よし! ついに始まった!「行くわよ! ウィンターッ!!」私は茂みから立ち上がった。「はい、ゲルダ様!」
Last Updated : 2025-12-01 Read more