橘美咲(たちばな みさき)が命を落としたのは、新堂翔太(しんどう しょうた)と最も愛し合っていた頃。対向車が突っ込んでくる。その瞬間、翔太は真っ先に美咲をかばう。でも、激しい衝撃で美咲の体はフロントガラスを突き破り、宙を舞う。瀕死の美咲が目にしたのは、脚を骨折した翔太が必死に這いつくばって自分に近づき、力いっぱい抱きしめてくれる姿だった。翔太は声にならないほど泣きじゃくり、涙と口から流れる血が美咲の頬にぽたぽた落ちてくる。「美咲、お願いだ、死なないで……お前がいなきゃ生きていけないんだ」全身が冷たくなり、声も出ない。悔しさと未練だけが胸に残ったまま、静かに目を閉じる。――次に目を開けると、美咲は三年後の世界にいる。戻って最初に向かったのは、新堂家の豪邸。翔太に会って、サプライズを仕掛けたかった。けれど、再会の瞬間、翔太は眉をひそめる。「……お前は誰だ?どうやって入ってきたんだ?」美咲は固まる。説明しようとしたそのとき、主寝室のバスルームからバスタオルを巻いた女性が現れる。その女は、美咲に瓜二つの顔。美咲は息を呑む。その夜、美咲は新堂家の地下室に縛り付けられ、徹底的に問い詰められる。どれだけ自分こそが本物だと説明しても、二人だけの思い出を語っても、体にある唯一のほくろまで見せても、翔太の目はずっと冷たく、彼女を整形した偽物だと決めつけている。「俺の美咲は、昔からずっと俺のそばにいる。どんなに似せてきても、どれだけ情報を集めても、俺が愛する美咲を間違うわけがない。美咲は死んでなんかいない。ただ事故で性格が変わっただけだ。どんな美咲だって、俺が愛するのは彼女だけなんだ。お前がどんなに似ていようと、俺は認めない。俺が真実を突き止めるまで、お前はここで大人しくしていろ」美咲は新堂家で最底辺の存在になる。誰からも冷たく扱われ、ときには下僕のように雑用を押し付けられる。やがて、美咲は執事から真相を聞く。翔太は事故後、美咲の死を受け入れられず「記憶喪失」になっていた。そこに付け込んだのが「偽物の美咲」。美咲のすべてを奪っていた。美咲は翔太の記憶を呼び覚まそうと、何度も彼に近づき、二人だけの過去を再現し続ける。そのたびに、「偽物の美咲」から残酷な仕打ちを受ける。腕をわざと火傷させられ、生理のたびに池に飛び込ん
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