明里は、葵の期待をばっさりと切り捨てる。「もったいないなんてことはないわよ。早く凪に12億円を返しちゃえば、もう脅されることもない。その時こそ、二宮グループは私たちだけのものになるんだから。邸宅なんて、一軒どころか、十軒だって買えちゃうんだから」「はーい」葵は名残惜しかったが、売却の手続きを進めることにした。12億円は決して小さな金額ではなかったが、別荘は立地もよく、相場も高かったため、すぐに内見希望者が現れ、そのまま購入の話まで進んだ。明里は大喜びで契約へ向かい、署名を済ませて代金を受け取ると、そそくさとその場を離れた。背後から、ずっと見張られているとも知らずに……猫のワクチン接種に出かけようとしていた凪のもとに、明里を監視させていた人から報告が入った。【明里さんが大地さんに買ってもらった邸宅を売りました。金額は12億円です】【決済はもう済んだの?】【2時間前には決済済みです。銀行から出てくる明里さんも確認しました】2時間……それなのに、明里からは何の連絡もない。まさか12億円を手元に置いて運用し、ぎりぎりまで増やしてから返そうとしているのか?だが明里に金を増やす才覚があるなら、そもそも今日のような状況にはなっていない。あの女の手元に置いておけば、消えてなくなるのと同じだ。それに、今のミツキホールディングスには資金が必要だった。凪はすぐに明里へメッセージを送る。【12億円はまだ?】【もう少し待ってよ。そんな大金、簡単に用意できるわけないでしょ?】明里はそう返しながら、株や投資信託の冊子を次々めくっていた。せっかく手に入った12億円を、そのまま全部凪へ渡すなんてもったいない。先に少し運用して増やし、その利益だけでも自分のものにできれば――そんなことを考えていた矢先に、凪から電話がかかってきた。「お金があるのに返さないで、投資で溶かしたら何で返すつもり?」「なっ……なんでわかったのよ!」明里は驚きすぎて、手にしていた冊子を放り落とした。慌てて周囲を見回す。だが、誰かに見張られている様子はない。それなのに、なぜ凪は12億円を手にしたことを知っているのだ?電話の向こうで、凪が笑った。「さっきまでは知らなかったけど、今、確信に変わった」明里の顔は、一瞬で青ざめ
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