「凪、俺は本気で君とちゃんと話がしたいんだ」「私はしたくない」凪はうんざりしていた。もう渉と何を話せばいいのかさえ分からない。若い頃、恋を知ったばかりの二人は、まるで一生分を先に使い果たすように、ありったけの愛の言葉を交わしてきた。社会に出たばかりの頃は、共に事業を広げ、今の恒業グループを築いた。けれど今、愛情は消え去り、残っているのは傷だらけの心だけで、そこから滲み出すのは、腐りきった膿ばかり。そして、口を開けば、互いを傷つける棘しか出てこない。そんな自分たちが、いったい何を話すというのだろう?凪が背を向けて立ち去ろうとしたその時、一人の男が慌ただしく駆けてきた。それは、空の運転手だった。人のよさそうな運転手は、二つの料理袋を提げ、小走りで凪の前までやってきた。「空様が、凪様のお食事をあらかじめ手配しておかれました。どれも凪様のお好きな味付けだそうです。火事で驚かれたあと、わざわざ外へ食べに行くのは大変だろうと、急いで届けるよう言われまして。急ぎすぎて、危うく違反切符を切られるところでしたが、料理は無事です。まだ温かいですよ」「あらかじめ?」凪は目を瞬いた。2人が下へ降り、賠償の話がまとまるのを待ってから、まだ30分ほどしか経っていない。袋のレストランのロゴも見たが、ここからなら車で1時間以上はかかる店。ということは、空は2人が部屋へ戻った時点で、すでに料理を注文していたことになる。凪は思わず笑みをこぼした。「本当に気が利くのね。ありがとう。この食事も、ありがたく全部いただくって伝えておいて。それと、違反切符を切られなくてよかった。安全が一番だから、帰りも気をつけてね」「お気遣いありがとうございます。では、どうぞごゆっくりお召し上がりくださいね」運転手は人懐っこい笑顔を残し、駆け足で去っていった。凪は2つの袋を軽く持ち上げてみた。どうやら2人分あるらしい。残念ながら空は仕事に行ってしまったので、自分が1人で2人分を堪能するしかないようだ。そう思いながら、凪は部屋へ戻ろうとした。料理を受け取った凪があまりにも柔らかく笑ったのを見て、ますます胸の内がざわついた渉は、思わず手を伸ばし、凪の腕を掴んだ。「放して!」凪は反射的にその手を振り払い、鋭く睨みつけた。「いつまで
Leer más