怪しい人影も気になるけれど、今は琴音のほうがずっと大事だ。凪は急いで病室へ駆け込んだ。ベッドの上では、琴音の脚が高い位置でしっかり固定されていて、顔や腕にも擦り傷がある。真っ白なシーツに包まれながら、眠気に負けそうな顔で横たわっていたが、凪が入ってきた気配に気づき、琴音は重そうにまぶたを開くと、ふっと笑った。「来てくれたのが凪でよかった。楽団のみんなに先に知られてたら、病室が大騒ぎになってたよ」「笑ってる場合じゃないでしょ!?」凪は息を切らしながらベッドへ駆け寄った。無理に笑って顔の傷をひきつらせる琴音を見て、目に涙が溜まる。「いったい何があったの?琴音、自分の手を怪我するのが怖くて、普段からすごいゆっくり運転してたのに、どうしてこんな大事故になるの?」「どうも車の整備で何かあったみたいで、ブレーキが利かなくなって……ちょうど登校中の子供たちが並んでたから、そっちに突っ込むくらいならって、脇の植え込みに突っ込んで木にぶつけたの。エアバッグの衝撃で肋骨を二本やっちゃって、脚は……」「ブレーキが利かなかった?それをただの整備ミスで済ませるつもり!?」凪は勢いよくベッド脇へ腰を下ろした。「琴音が自分の命と手をどれだけ大事にしてるか、私は知ってる。こんな事故、単なる不注意で片づけられるわけないよ。私が調べるから、琴音はちゃんと治療に専念して」琴音は一瞬呆気に取られた。そこまで大事にしなくてもいい、そう言おうとした時、凪が琴音の無事なほうの肩を押さえた。そのまま身を屈め、琴音の首元へ顔を埋めそうなほど近づく。「本当に……死んじゃうんじゃないかって怖かった。お願いだから、笑って済ませないで。冗談にもしてほしくない。私が絶対に何があったのか突き止めるから……だって私たち、また一緒にステージに立つんでしょ?琴音に何かあったら駄目なんだよ!」凪の押し殺した声は、最後には悲鳴に近くなっていた。驚いて目を瞬かせた琴音は、昔のことを思い出した。冬に琴音がインフルエンザにかかった時、まるでインフルエンザで命を落とすのではないかと、本気で心配しているくらいに、凪は一晩中ベッドのそばに座っていた。二人とも音楽を愛していた。そして、互いのことも大切に思っている。琴音は目を潤ませ、凪の袖をそっと引いた。「全部、凪の言うとおりにする」「う
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