All Chapters of ニセ夫に捨てられた私、双子と帝都一の富豪に溺愛されています: Chapter 11 - Chapter 20

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 「まあまあ、お二人とも。そのあたりで収めなさいな。せっかくの再会が台無しじゃないの」  優雅に言いながら、香澄は「お茶の用意をしてあるのよ、いらっしゃい」とダイニングの方へ連れて行った。  西条の屋敷とは違い、大広間のダイニング。西洋から取り寄せたであろう大きなアンティークの洒落たテーブルに椅子。いったいいくらくらいするのだろうか。この部屋の調度品や家具だけでも相当儲けていそうだ。 「召し上がれ」  香澄からお茶を出された。(このお茶……きっとまた何か入っているわ) 夕子の忠告を守ろうと、飲むふりをしながらこっそり持ってきたハンカチに紅茶をしみこませる。  茶菓子には西洋の菓子である、珍しいものが出された。現代のビスケットに当たるものだ。 桐島家は国内で作られた商品を海外へ輸出し、また、海外の珍しいものを買い付け、日本で販売することで財を成している。かつては貿易商として東条との関りもあったものだから、なんとしても話を聞きだしたい。  しかしビスケットの話から、突然東条の工場に話を振るわけにはいかない。 (まだここに来たばかりだから、この人に追い出されないように気を付けながら、様子を探りましょう)   「嬉しいですわ。香澄様のようなご立派な方と、こうしてお話しできるなんて」 ――猫かぶり。  その一言が美桜の喉まで込み上げたが、黙っておいた。「それにしても、奥様。京様はお優しいのですね。没落した家の娘を妻にされるなんて」  綾音の声が、わざと香澄に向けられる。  その言葉の意味を、香澄が気づかないはずがない。  美桜は息を潜めた。 香澄の笑みが、わずかに固まる。 「桐島の家は、血筋や身分より“器”を重んじる家ですの。……もっとも、それを理解できる方が、どれほどいらっしゃるかしらね」 京を庇うためだっただろうが、その瞬間、綾音の目が光を失った。  
last updateLast Updated : 2025-10-13
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