翌日。帝国ホテル大広間――。 現在の日本を象徴とする、粋で贅を極めた社交場。煌めくシャンデリアの下、大勢の事業家・その家族が集まった。 赤い絨毯を踏みしめる靴音が絶えず響き、笑い声と楽団の調べが混ざり合う。 美桜はその光景に身が固くなる。金と名誉をまとった人々の間に、己の存在があまりに小さく感じられた。かつてはそこに身を置いていたはずなのに。 浅野一成は彼女の傍に立ち、背筋を伸ばしたまま穏やかに微笑んだ。 「大丈夫。僕の傍から離れないで。誰がなんと言おうと、君は僕の妻だ。それに君は、かつて名を馳せていた正当な東条の血筋なんだ。堂々としていればいいよ」 その言葉だけで美桜の胸の鼓動が落ち着いていく。 彼の差し出した手を取ると、白手袋越しに温かさが伝わった。 やがて司会の声が響く。「本日は浅野商会・浅野一成様からご挨拶があります」 一瞬、会場の空気が変わった。 拍手と視線の奔流。 それらすべてが一成と、美桜のもとへ向けられる。
Terakhir Diperbarui : 2025-11-15 Baca selengkapnya