紬は、寧音から向けられる視線を無視することなどできなかった。その瞳に浮かぶ笑みの色が――ひどく癇に障る。一方、慎の端正ながらも、氷のように冷ややかな顔には何の感情も浮かんでおらず、かつて紬と親密だった痕跡など、欠片も見当たらなかった。周囲からの好奇そうな視線が、じりじりと肌を焦がすようだ。紬は唇の端をわずかに歪めた。「園部さんにはもう素敵な騎士様がついているようですけれど、清水社長は一体どういう立ち位置なんでしょうね?」その一言で、一颯の顔色が見る見るうちに険しくなる。彼は思わず寧音を一瞥した。苛立ちが胸の奥から込み上げてくる。紬のやつ、当てつけのつもりか!「腰巾着でしょ」笑美の追撃は容赦がない。一颯が紬に突っかかるというのなら、彼女は全力で親友の味方をするつもりだ。そもそも、最初に因縁をつけてきたのは一颯の方なのだから。一颯の表情がさらに曇る。「笑美、いい加減にしろよ。私はただ、園部さんに好意を寄せているだけだ」その物言いに、寧音も思わず眉をひそめた。紬が気圧されて縮こまると思っていたのに、まさか矛先を変え、あろうことか一颯と自分を同列に扱うとは心外だった。一颯のことは悪い人だとは思っていない。だが、こうしてひとくくりにされるのは不愉快だ。何しろ、慎と肩を並べられる男など、この世に存在しないのだから。場の空気が凍りついていることは、紬にも分かっていた。だが、構うものか。ふと顔を上げる。不意に、向かい側に佇む慎と視線がぶつかった。彼は静かに紬を見つめ返している。その表情に変化はないはずなのに、瞳の奥底に、微かな笑みの色が揺らめいているように見えた。紬は思わず息を呑む。慎の真意がまるで読めない。これだけ場の雰囲気を悪くしたというのに、どうして彼は……怒るどころか、楽しんでいるような目をしているのだろう?慎の腹の内がさっぱり分からなかった。紬は眉をひそめると、笑美の手を引き、別の展示エリアへと歩き出した。紬が立ち去ったのを見届けてようやく、寧音は眉間の皺を解いた。そして、今まで傍観に徹していた正樹へ、淑やかで裏表のない笑みを向ける。「秦野さん、またお目にかかりましたね」正樹もようやく口元を緩めた。「園部さん、長谷川代表、お久しぶりです」「凛太はいつ
Read more