慎の誕生日パーティーでの一件は、もはや隠し通せるものではなかった。西京市の上流社会では、一夜にしてほぼ全員が知るところとなっていた。慎の立場は、この社交界においても特別だ。隙のない彼から、あのようなスキャンダラスな話が表に出ること自体、誰もが想像すらしていなかったことだった。もちろん、上流階級においては、正妻がいながら外に別の女性を囲っている人間などいくらでもいる。出張先の都市ごとに「親しい女」がいたとしても、誰も驚きはしない。珍しくもない、社交界の暗黙の了解だ。ただ、今回の件で最大の問題となったのは——寧音という女は、世間に姿を現した当初からずっと、慎の「正式な交際相手」として堂々と振る舞っていたことだ。見た目は洗練されていて、家柄もよく、上流社会でも高く評価される学歴を持ち、帰国するなり長谷川家の当主である慎に大切に扱われていた。人々の目には、彼女の姿が何重にも美化されて映っていた。それが、一夜にして完全に崩れ去った。ただの、他人の家庭を壊そうとする略奪者だったと白日の下に晒されたのだ。高学歴、優雅さ、完璧なイメージ——寧音を飾っていたすべてが、まるで正反対の醜いものへと変わった。人々が息を呑み、同時に好奇の目を向けるのは、まさにそこだった。単に男が外に女を囲うこと自体は、少しも珍しくないのだから。だからこそ、嵐が過ぎ去った後も、こうしてこの三人が同じ場所で顔を合わせれば、周囲からの容赦ない比較と憶測が止まらない。紬にも、今この場にいる人間たちがどんな下世話な詮索をしているかは、手に取るようにわかっていた。人というのは、そういう生き物だ。ただ、紬自身は、そういう泥沼の揉め事に自分から首を突っ込むつもりはまったくなかった。慎がどう出るかなど確認もせず、さっさとスタッフが置き直したネームプレートを手に取った。「気を遣わなくていいです。もともと用意されていた席に座りますから」それだけ言って、後方の自分の席へと向かった。いわゆる「女の争い」のような、安い三文芝居に付き合うのは心底嫌だった。慎に選ばれるのを健気に待つなど、もっと嫌だ。自分の選択権は、最初から最後まで自分にある。その迷いのない振る舞いに、周囲から驚きの声が漏れ、それから一拍置いて、嘆息が漏れた。さすがは、本物の長谷川夫人だ。この肝の
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