紫乃も目を赤くして、鼻をすすりながら昭希を揺らし続けていた。「なんて甘ったるいのよ、あの二人!本当に参ったわ!」会場は完全な非公開ではなく、半公開という形だった。招かれたメディアが、終始その場を記録し続けていたのだ。新郎新婦は「逃げた」のに、誰もが感動に包まれていた。慎の独白映像は、ほぼ無編集のまま各プラットフォームに配信された。一時間も経たないうちに、あらゆるランキングの一位に躍り出た。長谷川グループの長谷川代表——金融・投資の世界で頂点に立ち、若くして不可侵の領域に達した男。その知名度はもともと高かったが、誰も知らなかった彼の一途な秘恋が公になり、閲覧数は信じられない勢いで跳ね上がった。トレンドワードが次々と浮かび上がる。#絶美の愛 はい喜んで#人生の勝者・温井紬#本物の夫婦、また愛を信じられた映像は爆発的に広まった。前例のない反響を呼んだ。多くの人が拡散し合い、知人や家族へと広め合い、感動の渦に巻き込まれる人が続出した。コメント欄は感動の声で完全に溢れかえった。長谷川グループの株価は上昇し続けた。企業イメージは短時間のうちに、かつてない高みへと跳ね上がった。しかし何より大きかったのは——これ以降、慎の紬への深い愛を疑う者が、誰一人いなくなったことだ。北国に降り立った紬も、国内のニュースを目にした。窓の前に立ち、様々な時期の慎を改めて思い返していると、なぜか胸の奥がじわりと痛くなった。映像の表面にではなく、その奥の奥にあるものが、肌で感じ取れたのだ。あの感情は、決して軽いものじゃなかった。今日この日まで、気づけば十年近い歳月が積み重なっている。車の中で慎が急に「俺を受け入れるって、一言録らせてくれ」と言い出した時、紬は深く考えずに、気持ちが弾んだまま答えていた。まさか慎がそれを式場に送り返し、あの無数のプロポーズ映像の末尾に繋げるとは、思ってもいなかったのだ。長い年月を経て、ようやく届けられた答え——それがこんな形になるとは。それを知ったのも、実は映像が流れた後だったし、慎がここに連れてくると言い出したのもその後だった。今、北国は大雪だった。舞い落ちる白雪がまばゆく、目がくらむほどだった。世界に自分と慎の二人だけが残されたような気がした。そして
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