世羅の問いに対し、理斗ははぐらかすような真似はしなかった。ただ事実だけを告げた。「笑美とは、二十年近い付き合いだ」その一言に込められた真意は、捉えようによっていくつもあり得る。それだけ長い歳月を共有した絆は、そう簡単には壊れない——そういうことだ。世羅は黙って拳を握り締めた。理斗を見つめた瞳が、一瞬だけ鋭く冷たくなった。だが、世羅は賢かった。ここで彼に追い打ちをかけるような面倒な真似はしない。さらりと話題を変え、微笑んでみせた。「……そうだよね。大丈夫、気にしないで。私、ちゃんと分かってるから」穏やかに頷き、いつも通り、理斗を頼りながらも適度な距離を保った。理斗は世羅を見つめた。彼女が抱えるいくつかの感情には、どうしても応じることができなかった。それでも、笑美と自分は、はじめから一緒になる運命なのだ。……世羅と別れて車に乗り込んだ理斗は、眉をひそめたまま、しばらくエンジンをかけずに沈黙していた。最近の笑美は、明らかに感情の起伏が激しすぎる。彼女がどれだけ強がってみせても、心の中では自分のことを絶対に手放せないのだと、理斗は思い込んでいた。だがそうは言っても、根拠のない嫉妬で笑美がずっとくすぶり続けているのは、見ていてあまり気分のいいものではなかった。笑美が不機嫌であれば、理斗だって心地よくはない。少し考えた末、笑美に電話をかけて、機嫌を取ってやることにした。結婚式の準備に意識を向け直させれば、それで彼女も落ち着くはずだ。携帯の連絡先の一番上には、笑美の名前が固定されている。発信ボタンを押そうとしたその瞬間、画面が切り替わり、周平からの着信が入った。理斗は怪訝に眉を寄せ、通話に応じた。「……お前、どういうつもりだ!」電話口の父は、いきなり声を荒げていた。「清水家へ来いと言っておいただろう。婚姻届の具体的な話を進めるというのに、お前はそれほど忙しいのか!」理斗は苛立たしげに眉間を揉んだ。「……急ぎの用事が入ったんです」「届を出すことより大事な用などあるか!」「婚姻届など、いつでも出せるでしょう。今日でなくても問題はないはずです」そこに関しては、疑う余地などなかった。「いいか、よく聞け。今日、笑美はお前が来なかったことに相当頭に来ていたぞ。その勢いで、ついに『結婚しない』とまで
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