事態はすでに、誰の手にも負えないほど深刻化していた。想定していた「最悪のシナリオ」とは、せいぜい理斗が後から戻ってきて謝罪し、内々に婚姻届を出して丸く収める、という程度のものでしかなかった。当日の逃亡劇も、社交界の噂話として少し騒がれれば、やがて忘れ去られるだろうと。しかし、今日の承一によるプロポーズ――いや、白昼堂々の略奪婚と言うべきか――が、このスキャンダルに爆発的な火をつけてしまった。理斗個人だけでなく、彼の一族全体が、世間から永遠に笑い者として後ろ指を指され続けることになるのは明白だった。とはいえ、真実は誰もが理解している。元はと言えば、花嫁を捨てた理斗自身がすべて悪いのだ。今の時代、人々の価値観はずいぶん自由になった。因習に縛られず、自分の幸せのために生きることを選ぶのは、決して恥ずかしいことではない。笑美が別の人と結ばれる決断を下したことを、責める者など一人もいなかった。彼女への敬意、羨望、野次馬的な興奮が入り混じり、かつてないほどの巨大な波が巻き起こっていた。会場は、未だに喧騒に包まれている。完全に出番を失った「役者」の男性は、ぽかんと口を開けていた。……俺の出番はどうなったんだ。残りの報酬は、ちゃんと振り込んでもらえるのだろうか。紬は、二人が消えていった扉を眺めながら、知らず知らずのうちにふっと口元を緩めていた。承一はもともと、少し強引で型破りなところがある男だ。勢い任せに見えて、その実、見事に本質を見抜いて的確に動く。彼の大胆不敵な行動は、いつだって必ず「正解」を導き出すのだ。だからこそ、紬はずっと信じてきた。――この世界は、勇気を持って踏み出した者のためにあるのだと。……抱きかかえられたままスポーツカーの助手席に押し込まれた笑美は、いまだに現実感がなく、まだ夢を見ているようだった。運転席に乗り込んできた承一が、笑美にシートベルトを締めてやりながら、長い指でぱしんと彼女の額を弾く。「身分証明書と戸籍謄本、すぐに出せるか?」笑美は額をさすりながら、ぼんやりと答えた。「出せる。自分の車に積んであるから」実のところ、彼女はずっとそれらを肌身離さず持ち歩いていたのだ。笑美にも、いじらしい乙女のような、馬鹿げた夢を抱いていた時期があったからだ。もしも理斗がある日突然、ロマ
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