◇ 仕事を終わらせ、自宅に戻ってきた私は、夕飯とお風呂を済ませて、既に自室で休んでいた。 スマホのスピーカーからは、苓さんの優しい声が聞こえる。 「それで、苓さん。今日は予想外の訪問客が来たんです」 苓さんの低くて、甘い声が耳に心地よくて。 行儀が悪いけど、私はころり、とベッドに横になって苓さんに伝える。 「ええ、そうなんです。御影ホールディングスの、御影専務が突然……」 苓さんも戸惑っているようで、声音にはそれが色濃く現れていた。 だけど、私にも理由までは分からない。 「それが、私にも分からないんです。お父様の秘書の上尾さんが一緒に待ってくれたんですけど、彼を見た御影専務が顔を顰めて……2人で話をしたい、と」 「ええ、そうなんです。何だか不気味ですよね?」 苓さんは、考え込むように少しだけ押し黙ったあと、言葉を発した。 「──えっ!?」 「うちの新規事業が、阻まれる可能性があるって事ですか……?」 もし、本当にそうなら。 ぼうっとしている場合じゃない。 お父様や、お祖父様に相談して、御影ホールディングスの妨害を阻止しなくちゃならない。 この事業には、期待しているのだ。 藤堂、小鳥遊、田村の三家は間違いなく成功するだろうとふんでいる。 莫大な利益だって見越している。 それを、妨害されて横から攫われてしまったら。 損失は、計り知れない。 私が真っ青になりながら今後の対応について考えを巡らせていると、苓さんの声が続く。 けど、茉莉花さん。まだ、御影専務が個人的に接触してきただけだから、過剰に反応しないでください。相手の動きを注視していてください。……俺も、できるだけ御影ホールディングスの動きには目を
Last Updated : 2025-12-05 Read more