All Chapters of あなたの「愛してる」なんてもういらない: Chapter 101 - Chapter 110

183 Chapters

101話

ミーティングに参加してくれていたチームの皆が資料を食い入るように見てくれていたけど、その中でも志木チーム長と、矢田主任は熟読しているようで、私の説明が終わった後も、書類にじっと視線を落としていた。 「矢田主任に、代替案のメリット、デメリットの取りまとめをお願いしてもいい?皆の意見を纏めて欲しいの。市場調査データの修正と、施策の強化については、また皆で意見を出し合い、纏めましょう?」 私がそう言葉に出すと、資料に落としていた視線を上げた矢田主任とぱちり、と目が合う。 何だか、矢田主任の目がとても輝いているように見えた。 「かしこまりました、本部長!今日中に纏め、明日には提出いたします!」 「そ、そんなに急がなくていいのよ……?」 「いえ!きっと、皆から沢山良いデータを出して貰えると思います。すぐにご報告をしたいので!」 「え、ええ…。無理はせずにね……?」 「ありがとうございます!」 ハキハキと、明るく言葉を返してくれる矢田主任。 私は彼女の気迫に押されつつ、笑顔を浮かべて頷いた。 そして、今の今まで言葉を発しない志木チーム長がとても気になる。 何か、資料に不備でもあったかしら。 それとも、見当はずれな内容に、何も話せない、とかかしら……。 私が不安になっていると、ゆっくりと志木チーム長が顔を上げるのが視界の隅に入る。 顔を上げた志木チーム長の顔は、僅かに興奮で紅潮しているように見えた。 そして、矢田主任同様、瞳がキラキラと輝いている。 まるで、生き生きとした表情──。 「……すみません、侮っていました」 「──え?ごめんなさい、もう一度言ってもらえるかしら?」 ぽつり、と零した志木チーム長の言葉が聞こえなくて、私がそう問うと。 志木チーム長は嬉しそうに薄っすらと笑みを浮かべつつ、ゆるりと首を横に振った。 「いえ……、何でもないです。それより、藤堂本部長が指摘して下さった内容は、盲点でした。指摘して下さった部分を改善すれば、劇的に良くなると思います。早速、取り掛かってもよろしいでしょうか?」 キラキラ、と効果音すら聞こえてきそうな程、志木チーム長の目が輝いている。 私は、彼の様子に呆気にとられつつ、気押されるようにして頷いた。 「え、ええ。お願いするわ。無理はしない
last updateLast Updated : 2025-11-30
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102話

それからも。 会議室に残った他のメンバーも、そわそわとしながら私に退出の許可を取りに来て、ミーティングは必然的にお開きになってしまった。 ぽつん、と1人残った会議室で、私は呟く。 「ミーティングは……、成功、なのかしら……?」 嫌な雰囲気では、無かった。 皆、私が用意した資料をとても真面目に読んでくれて、気難しそうだった志木チーム長の表情も明るくなって行ったのが、目に見えて分かった。 復帰して、初めての大事なミーティング。 初めて顔を合わせる人に、私の事を知ってもらう大事な場だった。 それが、きっと大成功に終わった事がミーティングの空気から分かって、私は1つ胸を撫で下ろした。 「苓さんに、伝えたいわね……」 復帰後の初出社。 苓さんは心配して、気負わずに、と朝にわざわざ連絡をくれた。 苓さんだって出張前でとても忙しい筈なのに。 苓さんの事を思い出すと、胸がぽかぽかと温かくなる。 私は自然に笑みを零していた。 「さて……お父様、いえ、社長にもカフェ事業計画の相談に行かないと」 午後。 お父様である社長と私、そしてカフェ事業部の部長を交えて会議をした。 他社との調整を行っているうちに、あっという間に時間が経っていたようで。 時刻は夕方。 あと1時間程で定時になる、と言う時間帯に、私がいる本部長室の扉がノックされた。 「はい、どうぞ」 「失礼します」 扉を開けて入室したのは、志木チーム長。 彼はミーティングの時に私が渡した資料と、自分で追加
last updateLast Updated : 2025-12-01
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103話

あれから。 志木チーム長と話を終える頃には、すっかり定時を過ぎてしまい、私は慌てて志木チーム長に部署に戻ってもらった。 報告や、確認は電話かメールでも出来るのに、わざわざ志木チーム長は足を運び、直接話に来てくれたのだ。 私は、他の経営戦略チームのメンバーの報告メールを本部長室でチェックしていた。 その時、私用スマホが震えた事に気付き、隅に置いていたスマホを確認する。 すると、ディスプレイには「苓さん」の文字が。 「──っ!も、もしもし……っ!」 苓さんからの電話に、私が慌てて応えると、スマホの向こうにいる苓さんが驚いたように息を飲んだのが分かった。 「こんばんは、苓さん」 機会越しに聞こえる苓さんの声は、普段より低くて、直接耳に届いて。何だか耳元で話されているような気がして少しだけこそばゆい。 くすくす、と苓さんの低い笑い声が聞こえてきて、次いで苓さんの落ち着いた声が耳に届く。 「は、はい大丈夫です。すみません、びっくりしちゃって……」 さらり、と苓さんの口から「可愛い」と言う言葉が出てきて、私は真っ赤になったまま、パクパクと口を動かしてしまう。 苓さんとお付き合い、をするようになって。 その前から……私を好きだ、と言ってくれていた時も優しくて、甘い言葉を度々口にする人だと思っていたけど。 お付き合いを始めた今、何だか苓さんの態度がもっと甘くなっているように感じて、今まで家族以外の男性にストレートに褒めてもらう機会が無かった私は、対応にたじろいでしまう。 「そ、そんな事ばかり言って……。その、初出勤は、恙無く……久しぶりに触れる仕事が楽しくて……あっという間に時間が過ぎてて、気付いたらこんな時間になっていました」 苦笑い混じりに私がそう答えると、スマホ越しの苓さんが一瞬無言になった。 あれ?と思って、苓さんに話しかけようとした私より早く、苓さんが話す。 「えっ?はい、そうです」 私があっさりとした口調で答えると、スマホの向こうからガタン!と
last updateLast Updated : 2025-12-01
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104話

あれから。 苓さんとの電話が終わった私は、そわそわとしながら帰宅の準備をしていた。 途中、本部長室の扉がノックされて、お父様が顔を覗かせた。 私の帰宅を心配してくれたようで。 お父様はまだ仕事が残っているらしく、運転手を手配しようか、と聞かれたけど、私が首を横に振ってそれを断ると、最初は驚いていたお父様だったけれど。 私の顔を見たお父様は、形容し難い、何だか嫌な笑みを浮かべて頷き、そそくさと部屋を後にした。 私の顔は、かつてないほど熱くて。 もしかしたら、私の顔は赤く染まっていたのかもしれない。 その顔を見たお父様が、何か誤解をしたかもしれない。 いえ、誤解じゃないんだけど……。 苓さんとお付き合い、をしてるんだけど……。 「ううう……」 何だか、お父様は全てをお見通しのような、そんな気がして。 まだ、お父様にもお祖父様にも苓さんとお付き合いをしている事を。 私が、苓さんを好きになった事を話していない。 それなのに、お父様には全部バレているような気がして、気が気じゃない。 用もないのに本部長室の中を忙しなくうろうろとしていると、私のスマホが通知を知らせた。 「──苓さんっ?」 急いでスマホを取り、通知を確認する。 すると、私が思った通り、苓さんからの連絡だった。 会社の地下駐車場に着いたから、いつでも降りてきて大丈夫、と苓さんから連絡がきていて。 私は慌ててバッグを掴み、部屋を後にする。 パタパタ、と小走りで地下駐車場に向かうと、苓さんは車の外に出て車に体を預けて、地下駐車場に繋がる出入口に顔を向けていた。 苓さん
last updateLast Updated : 2025-12-02
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105話

苓さんの運転する車で、自宅まで送ってもらった私。 藤堂の家の駐車場に着くなり、苓さんは運転席から降りて私が乗る助手席のドアを開けてくれた。 「茉莉花さん、辺りはもう暗いから、足元気をつけてください」 「ありがとうございます、苓さん」 苓さんが差し出してくれた手を握り、外に出る。 本来だったら、ここでお別れして早く苓さんに帰ってもらわないといけないのだけど……。 明日から出張に出てしまう苓さんと、しばらく──1週間ほど、会えなくなってしまう。 それが何だか寂しくて。 名残惜しさが、握った手を離すのを躊躇する。 きゅ、と私が苓さんの手を緩く握ると、苓さんが驚いたように僅かに目を見開いて私を見る。 「茉莉花さん?」 「……その、少しだけ、お話したいなって思って……。1週間、苓さんと会えないので……」 苓さんから顔を逸らしたまま、ボソボソと呟く。 まさか、そんな事を言われるとは思っていなかったのだろう。 苓さんは更に目を見開いて、私を見つめたあと。 一気に表情を緩めた。 はっきりと「嬉しい」と言う感情が伝わってきて、苓さんから手をきゅう、と握り返される。 「そうですね。俺ももう少しだけ一緒に居たいです。外で、お話します?」 「はい。すみません、我儘を言って……」 「茉莉花さんの可愛い我儘、沢山聞きたいですし、こうして茉莉花さんがまだ俺と一緒に居たいって思ってくれているだけで嬉しいです」 ふふ、と目を細め本当に嬉しそうに笑う苓さんに釣られて、私も自然と笑みが浮かぶ。 手を繋いでいる所をお祖父様に見られてしまうといけないから、繋いでいた手は離して、車の前で少しだけ立ち話をする事にした。 苓さんから借りた上着を有難く羽織らせてもらった私は、今日復帰した会社での事を話した。 「今日、数年振りに会社に出社したんですけど、とても優秀な人が沢山増えていたんです。これからの新規事業にもやり甲斐が上がって、仕事がとっても楽しかったんです」 「──それは、良かったです。……俺が高校の時の説明会の時も、茉莉花さんは今と同じように、楽しそうにキラキラとしながら話していましたよ」 「えっ、そ、そうなんですか?成長してなくて……恥ずかしいです」 「恥ずかしくないですよ。茉莉花さんが変わっていなく
last updateLast Updated : 2025-12-02
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106話

「お祖父様?」 「藤堂会長」 お祖父様は、杖を片手にゆっくりと駐車場にやってくる。 そして、そこには私だけじゃなく、苓さんの姿もあった事に驚いたように目を見開いた。 「小鳥遊の倅か」 「こんばんは、会長。茉莉花さんがまだ会社で残業をされていたので、ちょうど近くを通りかかったので、お送りしました」 「そうか、そうか。わざわざ茉莉花を送ってくれてありがとうな」 お祖父様は機嫌良さげに苓さんの肩を何度か叩く。 そして、夕食を食べて行くか?と苓さんに提案したけど、苓さんは申し訳なさそうな顔で、首を横に振った。 「ご一緒したいのですが、明日の朝早くて……仕事で四国に行きますので、すみません」 「そうか、四国か。カフェ事業で?」 「はい。良い材料がありまして、その交渉に」 「そうかそうか、頼んだぞ。帰って来たら顔を出しなさい。夕食を一緒にとろう」 「ええ、ぜひ」 お祖父様と苓さんの会話が終わり、苓さんは車に戻って行く。 「では、私はこのへんで。会長、またご挨拶にお伺いします。茉莉花さんも、また」 「ああ、気をつけて帰ってな」 「はい。苓さ……小鳥遊さんも、出張気をつけて行ってらっしゃい」 私の言葉に、苓さんは優しく微笑み、車に乗り込んで去ってしまった。 私とお祖父様は苓さんが帰って行くのを見送って、そしてそれから家に入った。 翌日。 会社に出勤した私は、1件のメールに気付いた。 開封すると、それは矢田主任からのメールだった。 昨日は、仕事を家に持ち帰って資料を作成したのだろう。 私が、ミーティングで話した
last updateLast Updated : 2025-12-03
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107話

社長室。 到着した私は、扉をノックした。 「社長、藤堂です」 「本部長か、入ってくれ」 お父様の声が聞こえ、扉を開けて入室する。 すると、お父様はデスクに座ったままあまり芳しくない表情を浮かべていて。 ぴりっとした緊張感が、室内に満ちている。 中には他の社員はおらず、私とお父様だけ。 「社長……?何か問題が……?」 きっと、何か良くない事が起きている──。 そう判断した私は、お父様へと近づいていく。 すると、お父様は疲れたように眉間を揉んだあと、重々しく口を開いた。 「……我々が入札していた案件を、尽くある会社が最終入札して持っていかれてしまった」 「──えっ」 「最終入札をした会社は、御影ホールディングスだ。……藤堂本部長にも、知らせておこうと思ってな」 「教えてくださり、ありがとうございます……」 「あちらから何か連絡があれば、私に知らせてくれ」 「分かりました、社長」 「話は以上だ。……戻っていい」 お父様の話が終わり、私は頭を下げてから社長室を退出する。 本部長室へ戻る道すがら、お父様から言われた言葉が私の頭の中をぐるぐると駆け巡る。 御影ホールディングスが、うちの入札していた案件を全て攫って行った──? どうして、そんな事を。 うちが今回入札していた案件は、日本庭園カフェの新事業開始のために必要だった、食品、建築、工事関係。 その全てを、まるでうちの仕事を奪うかのように御影ホールディングスが攫って行った。 何のため、に……? もやもやとした、得体の知れない気持ち悪さを感じる。 御影ホールディングスの目的が分からなくて、気持ち悪い。 本部長室に着き、私がメールのチェックをしていると、私用スマホが通知を知らせた。 「苓さん?」 苓さんだろうか──。 無事に四国に着いたのだろうか。 業務中だけど、少し見るだけならいいかな、と思い私はスマホを確認する。 すると、そこには。 苓さんの名前は無くて。 どこか、見覚えのある番号からショートメッセージが送られてきていた。 「──っ」 その番号を見た瞬間、どくり、と胸が嫌な鼓動を刻む。 過去、この番号から連絡がくるのを焦がれていた。 毎日毎日、連絡は来ないか、と日に何
last updateLast Updated : 2025-12-03
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108話

私は、微かに震える指でスマホに届いたメッセージをタップした。 メッセージを開くと、ただ一言だけ書かれていた。 【仕事が終わったら会社で待っていろ】 「何で……っ、どうして私が御影さんと会わないといけないのっ」 会う理由なんて、私には無い。 だから、私は急いでその連絡に返信をした。 会う必要は無い、と。 だけど、すぐに再びスマホの通知音が鳴り、御影さんから返信があった。 【これからも仕事をさせなくさせる事だって出来る。大人しく従え】 「〜っ」 ばんっ!と大きな音を立ててスマホをデスクに置く。 どうして、こんなに偉そうにされなくちゃいけないの。指図されなくちゃいけないの──。 苛立ちを覚えた私だったけど、そこでふと先程お父様から言われた言葉を思い出す。 「そうだ……!お父様に連絡を……っ」 あちらから連絡があれば、自分にも一報を入れてくれ、と言っていた。 私は急いでパソコンに向き直り、社内メールの宛先一覧の中からお父様の名前を探した。 夕方、定時後。 私は会社の地下駐車場にいた。 会社で待っていろ、と御影さんが言うからには、彼が直接うちの会社に訪ねてくるだろう。 私は、地下駐車場の入口でちらり、と隣に視線を向ける。 隣には、スーツをぴしっと着こなし、眼鏡を掛けた40代程の男性が姿勢正しく真っ直ぐ立っていた。 「上尾さん、付き合わせてしまって申し訳ございません……」 「とんでもない。お嬢様に何かあってはいけませんから」 にこり、と微笑んだ上尾さんに私は
last updateLast Updated : 2025-12-04
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109話

まさか、私が他の誰かを伴い、待っているとは思わなかったのだろう。 御影さんは苛立ちを顕にして、私に詰め寄ろうとした。 だけど、その気配を瞬時に察知した上尾さんがすっと動く。 私と御影さんの間に自分の体を割り込ませ、内ポケットから名刺ケースを取り出し、名刺を御影さんに差し出した。 「私は、上尾と申します。藤堂社長の専属秘書を務めさせていただいております。本日は、社長の代理でご一緒させて頂きました」 「藤堂社長の、秘書…、だと……」 「はい。不服でしょうか?」 にっこり、と上尾さんが笑みを浮かべる。 だけどその笑顔はどこか圧のような物を感じて。 御影さんは、圧に押されたようにぐっと押し黙ったあと、こくりと頷いた。 「いえ……。問題ありません」 「それは良かったです。……それで、藤堂本部長にご用とは……?本部長もお忙しいお方ですので、ご用がございましたら、手短にお願いいたします」 上尾さんの言葉はとても丁寧だけど。 常に笑みを浮かべてはいるけれど。 眼鏡の奥の目は、一切笑っていない──。 御影さんは、たじろぎつつ私にちらり、と視線を向けた。 「茉莉花……いえ、本部長……?藤堂、さんが本部長職に就いている、と……?」 「ええ」 「その、聞いておりませんでした。突然の訪問、失礼しました」 御影さんは信じられない、と言う目を私に向けてくる。 私がかつて会社で働いていた事すら、御影さんは覚えていないし、興味もなく忘れていたのだろう。 まさか、私が役職に就いているとは思わなかったようで、上尾さんに押されつつ呆気に取られた表情のままだったけど、すぐに切り替えたのだろう。 呆気に取られていた表情から一転、きりっとした顔に切り替わる。 「ですが、本日は私的な用で、藤堂さんに会いに来ました。少しだけ2人でお話したいのですが……」 御影さんが、ちらりと私を見やる。 当然、私が頷くと思っていたのだろう。 御影さんの言葉は、上尾さんに向けられたもので、私には「構わないだろう」と言うような感情が瞳に透けて見えた。 私が断る、なんて微塵も思っていない。 私はもう、御影さんの言葉に喜んで頷くような私じゃない。 だから、私は毅然とした態度で彼の言葉に首を横に振った。 「いえ、御影専
last updateLast Updated : 2025-12-04
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110話

御影さんに言われた言葉が、一瞬理解出来なかった。 上尾さんは、上手く聞こえなかったのだろう。 不思議そうな顔をして、私に問うような視線を向けた。が、私は彼に言われた失礼な言葉を遅れて理解し、かっと頭に血が昇る。 思わず、私は車に乗り込んだ御影さんに顔を向けた。 眉が吊り上がって行くのが、眦が吊り上がるのが自分でも分かってしまう。 車の後部座席に座った御影さんが、私のその態度を見て面白そうに口端を持ち上げていたのなんて、全く気付かなかった。 ◇ 藤堂 茉莉花。 御影の前では従順で、大人しい清楚な女を演じている。 そう、御影直寛は思っていた。 本当は性格が性悪で、家格が下の者に対して傍若無人な振る舞いをする品性の欠片もない女。 小狡くて、小癪な駆け引きをするような愚かな女。 そう、思っていた。 自分に対して釣れない態度を一貫して徹底するのも、自分の気を引きたいがための小癪な演技だ、と。 だが──。 「あんな気が強い女だったのか……面白い……」 御影は、自分の口端が無意識の内に上がっているのに気付かなかった。 あれだけ嫌悪していたのに。 愛する涼子を長年苦しめた憎い女だ、と。 そう思っていたのに。 車に乗り込む寸前。 御影が吐いた言葉に反応し、強く睨め付けてきた茉莉花。
last updateLast Updated : 2025-12-05
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