◇ それから、数日。 お父様が警察関係は全て対応して下さっているからだろうか。 私は、普段通り会社に出社して、自分の仕事に集中する事が出来た。 報道機関への対応も、お父様を中心にお父様の秘書である上尾さんが対応してくれているからか、記者が私に話を聞きにやってくる事は無かった。 一時、落ちてしまっていた藤堂グループの株価も今では回復の兆しを見せていて、世間の反応も日が経つにつれて変わっている。 最初は懐疑的で、疑いの目を向けていた一般の人達も、もしかしたらお祖父様が故意に傷付けられた可能性がある、と言う情報と、警察が捜査を開始したと言うニュースが報道されると、皆が手のひらを返したようにお祖父様の容態を心配し、無事を祈るようになった。 私は、本部長室でそれらのニュース記事を見つつ、ため息を吐いた。 「──警察機関の協力の有無で、こんな風に世間が味方してくれるなんてね……」 何だか、現金なものだ、と呆れてしまう。 少し前までは準備が疎かだったから、とか。やり方に問題があったのでは、とか。 沢山の人達が藤堂グループを叩いていたと言うのに。 それなのに、今はほとんどの人が擁護し、犯人がいるのなら許さないとまで話している。 ニュース画面を閉じ、パソコンの画面に私が視線を戻した所で。 本部長室の扉がノックされた。 私はハッとして扉に顔を向けた。 「──どうぞ」 「失礼します、藤堂本部長」 扉を開けて入室して来たのは、志木チーム長だった。 彼は、書類を手にしつつ気まずそうに歩いて来る。 「こちら、決算書類です。本部長のサインをお願いします」 「分かりました」 彼から提出された書類に、サインをする。 彼が持ってきたのは、今回の新規事業──カフェ事業に関する施策だ。 今回の事故の件で、会社が慌ただしくなろうとも、仕事は変わらず進む。 だけど、それが逆に今の私には冷静さを保つのにとても良かった。 「──うん、今回の施策はとても良いですね」 「ありがとうございます。チームの皆で考えたので、本部長の言葉を聞いたら喜ぶと思います」 「ふふ、そうだと嬉しいです」 バインダーを閉じて志木チーム長に渡す。 すると、普段はすぐに部屋を出て行って仕事に戻る志木チーム長が、この場を離れようとしなかった。 何か話したい事でもあるのだろうか──
Last Updated : 2026-02-26 Read more