All Chapters of あなたの「愛してる」なんてもういらない: Chapter 471 - Chapter 472

472 Chapters

471話

病院に着くと、既にお母様は起きていて退院の準備を終えていた。 「羽累……!起きていて大丈夫なのか!?」 「あなた。ええ、大丈夫よ。昨日点滴してもらって、すっかり良くなったわ」 お父様は病室に入るなり、お母様が起きているのを見て慌てて駆け寄った。 心配そうにお母様の顔色を確認したり、熱はないか、と額に手を当てたりしている。 いつもは威厳たっぷりで、頼もしいお父様のそんな姿を見て、私は呆気に取られてしまう。 苓さんは逆に、微笑ましそうに笑い、お父様とお母様の様子を見守っていた。 私たち2人の両極端な視線を受け、お父様はハッとすると「んんっ」と咳払いをしてお母様の手を取って歩き出した。 「羽累、荷物はこれだけか?」 「ええ、そうよ」 「なら退院手続きをしてくるから。……茉莉花に苓くん、羽累と一緒に先に車に戻っていてくれ」 「分かりました。荷物持ちます、馨熾さん」 「ああ、ありがとう苓くん」 お父様と苓さんはにこやかに言葉を交わし、苓さんは荷物を受け取る。 私たち4人は病室から出ると、お父様は退院手続きのために別方向に。 私と苓さん、お母様は駐車場に向かうために歩き出した。 「お母様、もう体調は大丈夫ですか?」 私がお母様に話しかけると、お母様はふわりと笑って頷いた。 「ええ、もうすっかり。茉莉花も、苓くんもごめんなさいね。バタバタさせてしまって……何とお詫びをすればいいのか……」 「いえ、全然!目が覚めたばかりなのに、私こそご無理をさせてしまい申し訳ございません」 「ふふっ、皆と過ごせるのが楽しくて、少し無理をしちゃったみたい。これからはちゃんとセーブするわ」 そんな風に和やかに会話をしながら、私たちは駐車場に向かう。 乗ってきた車に乗り込み、お母様を後部座席に。 苓さんが運転席に乗り、私は助手席に乗った。 お父様が戻ってきたらすぐに車を出せるよう、エンジンをかけた所で、苓さんのスマホに着信が入る。 「──谷島だ。……すみません、茉莉花。外で話してきます」 「分かりました。周囲に気をつけてくださいね」 私たちは、お母様に聞こえないように声を顰めて会話をする。 御影専務と、速水 朱美が捕まったとは言え、まだ涼子は捕まっていない。 彼らが捕まった今、涼子は焦っているかもしれないから。 涼子がどこに潜んでいるのか分
last updateLast Updated : 2026-08-20
Read more

472話

お父様から軽く聞いた事はあったけど、お母様から速水家の事を聞いた事はなかった。 それに、お母様は事故に遭ってから意識がなかったから──。 だから、お母様も速水家の現当主の妻、速水 朱美がお父様に懸想していた事も。 お父様に速水 朱美がアプローチしていた事も。 そこまで詳しく知らないのでは、と思っていた。 お父様も、大分昔だし、お母様との婚約が結ばれる前の話だったから、と言っていたから。 だけど、お母様もその事を知っているなんて。 私が驚いた表情をしていると、お母様は「あっ」と言って、自分の口元を手で押さえた。 その様子はまるで、その事はタブーだと、話してはいけないと言われていたかのようで。 私はお母様に向き、口を開いた。 「お母様、速水家の……速水 朱美さんの事、良く知っている方なのですか?」 私の言葉に、お母様は困ったように眉を下げて笑った。 ◇◆◇ 約三十年前──。 それは、まだ茉莉花の母、羽累と父親、馨熾が婚約者となる前。 当時、高校3年の馨熾と、高校1年の羽累の間に、婚約の話が持ち上がった。 財閥や、政治家の娘や息子が通う由緒ある学校に、2人は通っていた。 藤堂家の息子である馨熾は、入学当初から有名で羽累も馨熾の事は知っていた。 藤堂家と、羽累の東雲(しののめ)家。 羽累が中学生の頃から両家の縁組の事については話に上がっていた。 だが、それが本決定する様子は無かった。 羽累が校内を歩いていると。 羽累を呼び止める女子生徒がいた。 「東雲さん」 「……?」 呼ばれて振り返った羽累は、自分を呼び止めた女子生徒の名前を口にした。 「あなたは確か……速水家の?」 羽累がきょとん、と目を瞬かせていると、速水家の娘──速水 朱美は羽累をじろりとした目で上から下までを見下ろした。 そして、小馬鹿にするようにふんっ、と鼻で笑う。 「ええ。速水 朱美よ」 「えっと……速水さんが、私に何か用ですか?」 羽累が朱美にそう言うと、朱美は長い髪の毛を邪魔そうに手で払い、告げた。 「馨熾さんとは、私が今お付き合いしているの。余計な手出しはしないでくださる?」 「お付き合い……馨熾、さん……?」 「すっとぼけないで。馨熾さんと私は愛し合っているのよ。愛し合っている私たちの邪魔をしないで」 「それは──……っ」 「
last updateLast Updated : 2026-08-21
Read more
PREV
1
...
434445464748
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status