All Chapters of あなたの「愛してる」なんてもういらない: Chapter 451 - Chapter 459

459 Chapters

451話

「ただいま戻りました」 苓さんと一緒に、家に入る。 休日の今、家の中には最低限の使用人しかいない。 いつもは帰宅するとお母様が出迎えに来てくれるけど、今お母様は体調を崩している。 「茉莉花、茉莉花はお母様の部屋に行ってあげてください。俺は食堂に食材を持って行きます」 「ありがとうございます、苓さん。お母様のアイス……、その……溶けちゃったけど、お母様の部屋の冷蔵庫に入れて来ますね」 私がそう言うと、苓さんは口角を上げて色っぽい笑みを浮かべる。 苓さんの笑みを直視してしまった私は、顔を一気に真っ赤に染め上げるとアイスの入った袋を手に下げて慌てて廊下を走った。 背後から苓さんの低い笑い声が聞こえ、走ったら危ないですよ、と声をかけられたけど。 私は聞こえていない振りをして、お母様の部屋まで私は小走りで向かった。 「お母様、茉莉花です。失礼しますね」 コンコン、とノックをして扉を開ける。 いつもだったら私の声にお母様の声が返ってくるけど、お母様は熱を出していた。 多分今は眠っているのだろう。 だから私はそっと音を立てないように慎重に扉を開け、お母様の私室に入室する。 私はお母様の私室に備え付けられている小さな冷蔵庫を開け、冷凍庫にアイスを入れる。 そして足音を忍ばせてお母様の寝室へ向かう。 お父様が出張で居ない今、お母様は自分の部屋の寝室で眠っている。 寝室の扉をそっと開け、お母様のもとへ向かった。 「──お母様?」 「……茉莉、花?」 小声でお母様に声をかける。 すると、お母様は私の声に反応して、ゆっくりと目を開けた。 だけど、未だに熱があるからだろう。 お母様の視界はぼんやりとして定まっていないように見える。 「お母様、少しだけ額に触れますね」 「……ええ」 弱々しく答えるお母様。 お母様の顔は未だ熱で赤い。 熱が全然下がっていないように見えて、私はお母様の額に手を触れる。 そして、触れて驚いた。 「──熱い……まだ、全然熱が下がっていませんね、お母様……。このままだと良くないです、中央病院に行きましょう?」 「……大丈夫よ、茉莉花。多分疲れが出ただけよ」 「だけど、熱が下がっていません……。このままだと心配です。お父様が帰ってきた時、元気な姿で迎えてあげたいでしょう?」 私の言葉に、お母様はぐっと
last updateLast Updated : 2026-07-07
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452話

◇ 「早めに来てくださって良かったです。今日1日入院していただいて、点滴を打てば明日には熱も大分下がっているでしょう」 中央病院。 お母様が入院していた病院に、私たちはやって来ていた。 主治医の話を聞き、私と苓さんは胸を撫で下ろす。 「すみません、先生……」 「いえいえ。藤堂さんはまだ体力が回復していないのです、疲れてしまうとこういう事も起きます。だけど、心配はありませんからね、今夜は1日入院していただいて、明日迎えに来てください」 「分かりました、先生。母をよろしくお願いします」 私は主治医の先生にお礼を告げ、苓さんはお母様といくつか話をしている。 お母様と話し終わった苓さんがやって来て、私たちは部屋を出る準備をした。 「じゃあ、お母様。明日の午前中に迎えに来ますね。お父様は夜お戻りなので、それまでに良くなりましょう」 「ええ、そうするわ。茉莉花も、苓くんも迷惑をかけてごめんね」 「迷惑だなんてとんでもないです。また明日伺いますね」 「ええ、2人とも気をつけて帰ってね」 病室を出る際、お母様に手を振る。 お母様も笑顔で手を振ってくれて、私と苓さんは病室を出て廊下を歩く。 「先生の言葉を聞いてほっとしました……」 主治医の先生が問題ない、と言ってくれた事。明日には退院出来る事。 その言葉を聞いて、やっと私は安心出来た。 隣を歩いていた苓さんが、私の手を優しく取り、包んでくれる。 「茉莉花のお母様は強い方です。ただ、体力がまだ戻っていない今、今まで以上に気をつけないと駄目ですね」 「ええ、そうですね。休日は使用人の数を最低限にしていましたけど、お母様が元気になるまでは、平日と同様の数にしてもいいかもしれません」 「その方がいいかもしれません。俺や茉莉花、それにお父様も休日に仕事が入る事もありますし。そうすると、家の中は人も少なくなってしまう。……防犯面も含めて、次の休みからは人を増やす事をお父様に相談してもいいかもしれませんね」 苓さんの言葉に、私も頷く。 防犯面──。 確かに、そうだ。 まだ、涼子は逮捕されていない。 御影専務が涼子にどうやって情報を教えていたのか、その方法も分かっていない今、警戒するに越したことはない。 「そうですね。来週から、警備の人も増やし、使用人の数も平日と同じようにしないか、とお父
last updateLast Updated : 2026-07-07
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453話

お母様が入院してしまい、お父様も出張で家に居ない。 家の使用人も少なく、家の中は静かでどこか寂しさを感じる。 だけど、そんな雰囲気を吹き飛ばすように、明るい表情の苓さんが笑顔で話しかけてきた。 「茉莉花、火の通りは大丈夫そうですか?」 「ええ、ばっちりです苓さん!あと少し熱して、竹串で刺してみてください。串にお肉がついてこなかったら大丈夫です」 キッチン。 私と苓さんは、2人で夕食を作っていた。 2人でサラダ用のお野菜を洗って、お喋りしながら料理をする。 苓さんと料理をしていると、楽しくてあっという間に時間が過ぎる。 それに、1人でお料理をしていると時間がかかってしまうけど、料理の完成までも早くて。 この家に戻って来てからは、食事の準備は使用人が。 お母様が目を覚まして、退院してからはお母様がご飯を作ってくれていた。 だから、暫く自分で料理はしてなかったけど。 マンションに住んでいた時はいつも1人で料理をしていた。 誰かのためにご飯を作っても、それは食べられる事はなくて。 いつも1人でご飯を作っていたし、1人で食べていた。 だから、こんな風に誰かと──。 恋人と一緒に料理をする事がこんなに楽しいなんて。 恋人と一緒に料理をするのがこんなに幸せだなんて。 「──茉莉花?ふふっ、そんなに笑ってどうしたんですか?」 「えっ?私、笑っていましたか?」 「うん。凄く可愛い」 苓さんは濡れていた手をタオルで拭くと、私の頬をつん、とつついた。 苓さんも楽しそうに笑っていて、それが嬉しくて私もまた笑ってしまう。 「ただ、幸せだなぁって思ってたんです。そうしたら、私笑っていたんですね」 私がそう答えると、苓さんもとろりと目を蕩けさせ、微笑む。 「俺も幸せです」 苓さんはそう言って笑うと、少し屈んでキスをしてくれる。 可愛らしいリップ音がキッチンに響いて、私は目を閉じる。 唇を擦り合わせ、鼻先が触れ合う。 お互い目を合わせて小さく笑い合っていると、じゅうじゅうとお肉の焼ける音が耳に届いてきて、私と苓さんは慌てて体を離した。 「──いけない、お料理が焦げちゃいますね」 「ああ、しまった……。後でゆっくりいちゃいちゃしましょう?」 苓さんがこてん、と首を横に倒して悪戯っぽく笑う。 いちゃいちゃ、なんて……! 私は照れ
last updateLast Updated : 2026-07-08
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454話

苓さんと一緒に夕食を作っている間に、時間が経って。 外はもう既に暗くなり始めていた。 まだ真っ暗、と言う訳じゃないけど今日は満月で月も大きく、暗くなっても月明かりで十分視界は良さそう。 私と苓さんはトレーに料理を乗せ、日本家屋の庭園に向かう。 庭園はでこぼことした飛び石が等間隔で設置されていて。 「茉莉花、俺が先に行って料理を置いてくるのでここで待っていてください」 「ありがとうございます、苓さん」 「いいえ」 にこり、と笑った苓さんが先に縁側に向かう。 庭園の飛び石をスタスタと渡り、苓さんの背中があっという間に小さくなって行く。 庭園の柵を開け、縁側に回って料理が乗ったトレーを置いた苓さんは、足早に戻ってきてくれた。 「お待たせしました、茉莉花」 苓さんは私の手からトレーを受け取ると「足元気をつけて」と私を気遣いながらゆっくり歩いて行く。 先に縁側にトレーを置いた苓さんが私の方へ戻ってきて、私の腰に手を添えてくれた。 「薄暗いから足元気をつけて、飛び石に躓かないように……」 「ええ、分かりました」 私が転んで怪我をしないよう、苓さんは細心の注意を払ってくれる。 心配してくれる、と言う気持ちが嬉しくて。 私は腰を抱いてくれている苓さんにそっと自分の身を寄せた。 私の行動に驚いたのだろう。 苓さんは目を見開いたけど、すぐに嬉しそうにとろり、と瞳を蕩けさせる。 そして背中を丸め、私に覆い被さるように屈むと苓さんに唇を塞がれる。 「──んっ!?」 まさかこんな所でキスをされるとは思わなかった私が、びっくりして声を上げると、苓さんは喉奥でふふっと笑った。 戯れるように唇を舐められ、擽ったさについつい私も笑ってしまう。 すると、するりと苓さんの舌が私の咥内に入り込んで来た。 舌を絡め合うキス。 だけど、情熱的なキスじゃなくて、戯れるような、遊ぶようなキス。 お腹が疼くような、欲を孕んだようなそれではなくて、舌を絡めあっていると言うのに、どこかそれは楽しいキスで。 2人で時間も忘れて戯れるようなキスを続けていると、不意に風が吹いた。 ざあ、と木々が擦れるような音が耳に届き、私は苓さんの背中に回していた手でとんとん、と背中を叩いた。 「──んっ、せっかく作った夕食が冷めちゃう……。ご飯を食べましょう、苓さん」 「
last updateLast Updated : 2026-07-09
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455話

縁側に座り、2人で作った料理を間に並べる。 「ふふっ、少しお行儀悪いですけど、たまにはいいですよね?」 私が苓さんに笑いかけつつそう言うと、苓さんも同意するように頷いてくれる。 「ええ、今日は人が殆どいないですし、夕食を楽しみながら摂りましょう」 「ええ!それでは……いただきます」 「いただきます」 お互い手を合わせていただきますをする。 そして、夕食に箸を付けた。 私が丸めたハンバーグは苓さんに。 苓さんが丸めてくれたハンバーグは私に。 お互い、相手が丸めてくれたハンバーグを一口食べる。 「──んん〜っ、美味しい……っ!」 「茉莉花が作ってくれたから、凄く美味しいですね」 苓さんが嬉しそうに笑い、そう言ってくれる。 「俺が作ったのは茉莉花みたいに綺麗に丸くならなくて……凄い不格好でしょう?ちゃんと空気も抜けてますか?ちゃんと美味しい?タネは茉莉花が作ってくれたから、美味しいはずだけど、俺の丸め方が下手過ぎて、味が落ちていないですか?」 心配そうに聞いてくる苓さん。 そんな苓さんに、私は笑いながら自分のお皿にあるハンバーグを一口大に切り、苓さんの口元に持って行く。 話していた苓さんの口に箸を伸ばすと、そのまま苓さんはぱくりとハンバーグを食べた。 そしてもぐもぐと咀嚼し、飲み込むとほっとしたように頬を緩めた。 「苓さんの丸めてくれたハンバーグも、すっごく美味しいですよ。でしょう?」 「……良かった。ちゃんと茉莉花が作ってくれたハンバーグと同じように美味しい……」 「ええ、とっても美味しいです」 ほっとした苓さんは、付け合せのサラダに箸を伸ばす。 それからも私たちは世間話を楽しみつつ、時折お互いに食べさせじゃれ合いながら食事を進める。 そうしていると、薄暗かった空が完全に真っ暗になっていた。 だけど、真っ暗闇と言う訳ではなくて。 今日は満月だから、煌々と月の光が辺りを照らしてくれている。 お腹も満腹で、とてもいい気分だ。 2人で食べ終えた食器を部屋の隅に片し、私が先に縁側に戻る。 今日は就寝の時間まで、こうやって外で話してもいいかもしれない。 寒い冬がもう終わり、季節は春に変わる。 朝晩はまだ少し肌寒いけど、冬の夜のような空気がぴんと張り詰めるような寒さでも、肌を刺すような寒さも感じない。 今日の夜は比
last updateLast Updated : 2026-07-11
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456話

◇ 月を見ながら、月見酒なんて、いいんじゃないだろうか。 そう思い、料理をしている時に閃いた自分に、考え直せと言いたい。 その時の俺は、ただ本当に楽しみで。 ただ、茉莉花と一緒にお酒を楽しみたいな、なんて思っていたんだ。 それなのに──。 どうしよう、茉莉花が可愛すぎて死にそうだ。 「茉莉花、茉莉花……少しペースを落とした方が……」 心配する俺の声に、茉莉花は酒にとろんと潤んだ目で俺を見あげてくる。 ふふふ、と笑いながら俺に体を寄せる茉莉花が物凄く可愛い。 「全然大丈夫ですよ、まだまだ飲めます」 「うん……それは分かるんだけど……」 茉莉花はお酒に弱い訳では無い。 だけど初めて俺と茉莉花が会った時。 その時は、お互い大分酒に酔ってしまった。 あの時の事があるからこそ、今の俺たちがあるが、あの時の酒に酔った茉莉花の破壊力は凄まじかった。 俺の薄っぺらい理性なんて、茉莉花の可愛さの前では簡単に吹き飛んでしまう。 また、あの時のように茉莉花が深く酒に酔ってしまったら。 はっきり言って俺に耐えられる自信は微塵もない。 あの時とは違い、ここは茉莉花の実家だ。 しかも今はご両親が不在。 ご両親が不在の時に、茉莉花を抱くなんて──。 ご実家にお世話になっている俺の身で、茉莉花に手を出すなんて。 しかも、茉莉花のお母様がお気に入りのこの日本家屋で──。 だけど、そんな俺の葛藤など今の茉莉花からしたら簡単に吹き飛ばしてしまう。 「んー……、苓さん、あったかい……」 「──っ」 俺が1人で悶々と悩んでいる間。 茉莉花は暖を取るように俺の膝にひょい、と乗り上げた。 そしてそのまま俺の胸に顔を寄せ、満足そうにくふくふ笑っている。 その笑っている顔が可愛くて。 「ああもう、酔っ払いめ……」 可愛さが憎い。 そんな風に思う事が来るなんて。 茉莉花はにこにこと笑顔のまま自分のおちょこに酒を注ぐ。 俺が持っているおちょこにカチ、と自分のを合わせ「かんぱい」と舌っ足らずな可愛らしい事を言ってお酒を飲む。 くいっと酒を煽り、茉莉花の白く細い首元が顕になる。 無意識に、その白い喉元に吸い寄せられた。 「──んっ」 茉莉花の艶やかな甘い声が喉から漏れ、俺はその声にはっとした。 不味い。 俺もアルコールで思考するより先に本
last updateLast Updated : 2026-07-11
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457話

「──っ」 息がひゅっと詰まる。 先日切った背中の傷に痛みが走り、俺は目を細めた。 僅かに痛む傷。 だが、今はそれより目の前の光景が信じられなくて──。 「ま、茉莉花……っ!?」 俺がぎょっとした声を上げると、茉莉花は先程と変わらずくふくふと楽しそうに笑っている。 そして、俺に乗っかったまま上体を倒してぺたり、と上半身をくっつけて来た。 かぁっと顔が熱くなるのが分かった。 それもそのはず。 俺の足を跨いだ状態で、茉莉花が俺を押し倒しているのだ。 茉莉花の柔らかい体の感触がダイレクトに俺に伝わり、腰が重くなるのを感じた。 この体勢だと、すぐに茉莉花にバレてしまう。 「まっ、茉莉花……っ!離れて……っ!」 俺は慌てて茉莉花を自分の体の上からどかそうとした。 縁側に上半身を起こし、上に乗っている茉莉花の両脇に手を添え、持ち上げようとする。 だが、茉莉花は俺の考えを察知してそのまましがみついて来た。 「──っ」 「や、です。苓さんと離れたくない……」 茉莉花に抱きつかれ、俺の体はピシッと固まってしまう。 俺の胸元に頬を寄せ、擦り寄る茉莉花が可愛くて可愛くてしょうがない。 それに、ふわりと茉莉花の香りがして。 柔軟剤だろうか、それともシャンプーの香りだろうか。 香水を付けていないはずなのに、とても甘やかで、もっと嗅いでいたくなるような中毒性がある。 俺が固まっている間に、もぞもぞと自分の位置を直していた茉莉花は、ぺたりと俺の胸に手を当て、見上げて来た。 「苓さんと、ちゅうしたいです……」 「──っ」 「んっ、んむっ!?」 ぷつん、と頭の中で何かが切れた音がした。 何か、なんて分かりきっている。 俺の細い理性の糸なんて、茉莉花の破壊力のあるお強請りの前では紙同然だ。 性急に茉莉花の唇を塞ぎ、すぐに唇を舌で割って深くキスをする。 茉莉花が飲んだお酒の量はそこそこ多いらしく、俺の頭まで酒でぐらり、と揺れた。 小さく声を漏らす茉莉花の声に、また煽られて。 キスは深まって行くばかりだ。 茉莉花の手が俺の頭を抱え、くしゃり、と俺の髪の毛を掴むのが分かる。 まるで求められているような多幸感。 茉莉花が俺を求めてくれている、と言う嬉しさに益々キスが深くなって行く。 茉莉花とのキスに夢中になっていると、先程とは違い
last updateLast Updated : 2026-07-12
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458話

◇ ──ああ、私は酔っているんだな。 そんな自覚がはっきりとあった。 いつもより自制が効かず、苓さんに甘えたくなってしまう。 迷惑をかけちゃうかも。 そう考えるけど、苓さんに甘えたいという欲求には抗えなくて。 苓さんがたじろいでいる内に、私ははしたなくも苓さんの足に跨り、押し倒してしまった。 背中を打ってしまった苓さんの顔が強ばったのが分かった。 傷に響いているのかも。 すぐに離れないと。そして、苓さんの傷口を確認しないと。 そうは思うけど、苓さんから強く止められる事がなくて。 私はどんどん大胆に苓さんを求めてしまう。 ぎゅってして欲しい。 抱きつきたい。 キスしたい。 もう、私の頭の中はそんな言葉でいっぱいになっていて。 多分、それを口走ってしまったのだろう。 苓さんの表情が、明らかに変わった。 瞳はギラギラと光り、あきらかな熱を感じる。 苓さんも私を求めてくれているんだ。 それが分かった瞬間、凄く嬉しくて。 キスに夢中になっている内に、いつの間にか私の背中には縁側が。 そして、目の前には苓さん。 苓さんの奥には日本家屋の天井が見える。 それでああ、今度は私が押し倒されたんだ、と理解した。 けど、お互い求め合う事はもう止められなくて。 「苓さん……苓さ……っ」 私は必死に名前を呼び、苓さんに手を伸ばす。 すると、苓さんは私の手を取ってくれて。 自分の首に回すように誘導した。 ぐっ、と私の背中が浮き、再び唇を塞がれる。 呼吸を、思考を奪うような激しいキスに頭の中が沸騰するような感覚。 キスに答える事に必死になっていると、苓さんの手が私の服の中に入り込んだ。 大きくて、温かくて安心する苓さんの手のひら。 苓さんの手のひらは、私のお腹を撫でてから背中に回った。 ふつり、と胸が解放されたような感覚がした。 服を脱がされ、苓さんも乱雑に服を脱ぎ捨てる。 2人で生まれたままの格好になって、時間も忘れてお互いを求め合った。 「苓さんっ、苓さんっ」 「──はっ、茉莉花っ」 苓さんの私を呼ぶ声に、愛情を感じる。 私が何度も苓さんを呼ぶと、苓さんはどこか泣きそうな顔をして。 苦しくて息が出来ないくらいぎゅうっと抱きしめられながら、何度も達した。 寒い夜のはずなのに、体は熱を持って暑くて。 苓さ
last updateLast Updated : 2026-07-12
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459話

警報音が鳴り響き、私と苓さんはバチリと目を開いた。 「──この音、侵入者に対する警報音ですよね?」 「え、ええ……、そうです……!」 「茉莉花、服を」 ぱっ、と苓さんに服を渡され、私は急いで下着と服を身につけていく。 私が全ての衣服を身につけた時には、既に苓さんは服を着終えていて。 周囲を警戒するように見回していた。 「──この場所は、本邸から死角になっていて、見え辛いはずです。灯りも付けていないので、私と苓さんがここに居る事は誰にもバレていないはず」 「……警備会社の人が来るのに、どれくらいかかりますか?」 「恐らく、10分もかからないと思います」 苓さんの手を私が取ると、ぎゅっと強く握り返してくれる。 私は苓さんに身を寄せ、同じように周囲を警戒する。 幸い、今日は灯りを付けていない。 だから侵入者からも私たちの姿は見えていないだろう。 「……お母様が辛い時に不謹慎ですけど、お母様が入院していて良かったです」 「……確かに。家の中にいたら危険だったかもしれませんね」 私の言葉に、苓さんも頷いてくれる。 お母様は病院にいて、身の安全は保障されている。 お父様も今は出張中だから、この家にはいない。 使用人も最低限の人数しかいない。 それに、今日家にいる使用人は、自分の身は自分で守る事は出来るくらい格闘の腕がある。 この警戒音に気付いて、今は周囲を警戒してくれているだろう。 「茉莉花、俺から絶対に離れないでくださいね」 「分かりました……!」 ひそひそ、と声を落として会話をする私たち。 下手に動いて、物音を立てるより警備会社の人が来るまでの間、ここでじっとしていた方がいいだろう。 私は苓さんに抱き寄せられ、彼の腕に収まりながら周囲を確認する。 縁側があるここは、高い柵に視界を遮られていて、外から中の様子は見えにくい。 それに、外からこちら側に近付くなら、砂利道を踏みしめる足音だって聞こえるだろう。 私が庭側を警戒しているのとは逆に、苓さんは建物側をしっかりと見張ってくれている。 誰か人が入ってくるなら、建物の出入口だ。 私たちは今日、縁側の方面から入ってきたから建物の出入口は施錠されたまま。 鍵だって、私が持っている。 だから開けられ
last updateLast Updated : 2026-07-13
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