苓さんの説明を聞いていく内に、私の口は驚きであんぐりと開いてしまう。 し、信じられない……! 仕事先で、しかも協力会社の上司に対してそんな暴挙を……! 「苓さんの話が……」 「ええ、本当です。……とは言っても、証拠が無いですからね……。この辺りに防犯カメラがあればいいんですけど……」 「設置は本オープンに間に合うように手配していたから……」 「そうなんです。だから、プレオープン前の今はまだ設置されていないんですよね……」 ああ、くそ。 珍しく苓さんが憤りを顕にしていて。 本当に防犯カメラは設置されていないだろうか。 本オープン前に設置が完了していたら──。 そう思い、私は周辺を確認する。 このままじゃあ、あの女性スタッフの言い分が通る可能性の方が大きい。 苓さんの背中の怪我の具合にもよるけど……。 怪我の状態が酷ければ、女性スタッフに男性である苓さんが無理やり迫る、なんて事は状況的に無理だ、と判断されればいいけど、そうなると苓さんの怪我がかなり酷い状態じゃないと判断されない。 苓さんの潔白を証明するには、大怪我を願う状態な今のこの状況が悔しい。 プレオープン前の大事な今、どうして女性スタッフはこんな暴挙に出たのか。 私がそんな事を考えていると、苓さんがぽつりと呟いた。 「だけど、あの女性……。何だか様子がおかしかったんです。……切羽詰まっているような、何かに怯えているような……そんな感じがしました」 「……様子が?」 「──ええ、そうです」 こくり、と強くはっきりと頷く苓さん。 苓さんが違和感を覚えた、と言うならきっとその通りなのだろう──。 苓さんの話を聞いていた私の視界の隅に、ふととある物が入り込んだ。 「──あれは!」 私が大きな声を出した事に、苓さんがびっくりしたように目を見開く。 どうしたんですか?と言葉を発する苓さんに、私はぱっと顔を向けた。 「苓さんの潔白が証明出来るかも……!あそこに、防犯カメラが……!」 「──えっ!?」 本オープン前だから、と半ば諦めていたけれど。 まさか、カメラが設置されているなんて。 願わくば、あのカメラがしっかりと作動している事を祈るのみだ。 私と苓さんが喜んでいると、遠くから救急車のサイレンの音と、パトカーのサイレンの音がこの場所に近付いて来る音が聞こえた
最終更新日 : 2026-05-31 続きを読む