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第21話 未知の未来

 王子と別れたあと、私はすぐにフリーダを探した。フリーダは、王子にあてがわれた一室で呑気に紅茶を飲んでいた。 「ゆっくりしている場合じゃない、フリーダ」  フリーダは露骨に嫌な顔をする。 「予定通り、アヌ国へ一週間後。……そこで王子が襲われる」 「あんたね、また肝心な情報を言ってないじゃない」  ため息をつきつつも、その目は鋭く窓の外を見た。 「今日ので止められると思った。咎人を捕まえて、それでおしまいだと。でも……このままだと前と同じ流れになる。護衛は少数のまま。アヌで――」 「マリク王子が襲われる」  私の言いたくない台詞は、フリーダが先に言った。 「咎人は、もうアヌに先回りしているはず」 「確証はあるの?」 「ない。でもアヌでの襲撃はあまりにも完璧だった。王子の動きも、謁見の時間も、護衛の配置も把握していた」  フリーダは目を細めると髪を揺らした。 「つまり、王宮に内通者がいるってこと?」  私はゆっくりとうなずいた。 「そう。少なくとも一人は」  それが、前回の私の結論だ。いくら咎人でも、王子の予定が把握できなければあの迅速な展開はできなかった。  王宮の中に内通者がいる。 「面倒ね。外より中のほうが厄介なのに。前の記憶ではわかんないの?」  私は目を閉じる。  あの日。出立前、違和感はなかった。咎人の気配は襲撃のときに初めて感じた。  だから、城には咎人はいない。 「さっきの会議で、王子の訪問日程を聞いた瞬間。ほんの一瞬だけ、空気が変わった気がした」 「それは、そうね。無茶な王子の話だもの。みんな驚くわ」 「そうじゃない。確かに、驚きの声がほとんどだったけど、一人だけ……悪意を感じた」 「悪意?」  フリーダはいらただしそうに頭をかいた。 「情報が漏れてるわね」 「咎人にはもう伝わっている可能性もある。だから向こうで待ち伏せが成立する」  少し考えた後、フリーダは
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第22話 内通者の行方

 私はフリーダと顔を見合わせると、すぐに踵を返した。 「王子のところへ行く」 「また急ね、今から?」 「内通者が王子の近くにいる可能性があるから、確かめないと」  フリーダは髪をいじりながら少しだけ考え、それから紅茶を片付けた。 「そしたら、私は周りを見てくる。後で報告ね」  私は頷くと、そのまま扉を開けて王宮の回廊を急いだ。  夕暮れの光が石壁を赤く染めている。胸の奥のざわつきは、まだ消えていない。  早足で王子の執務室の前に立ち、一呼吸置いたのち扉を叩く。 「失礼します」 「ティナ? どうぞ」  中に入ると、マリク王子が書類を確認していた。私が目を通すよう頼んでおいた書類だ。 「どうしたんだい? 君のせいで僕はこんな重労働を」  無事を確認するとくすりと気づかれないように微笑む。 「フォヴォラと戦うよりは、軽い仕事ですよ。それに予定を変更しないと言ったのは王子です」 「ふふっ、まあそうだね。辛いが、これも自分の言葉が撒いた種か」  王子は柔らかく笑うと、一息つくように紅茶を飲んだ。 「それで? 要件は?」 「あっ、いえ……出立の件で少し確認を」  私は言いながら、部屋の中を見回す。  誰もいない。窓も閉まっている。  それでも、さっき感じた気配がどこかに残っている気がした。 「ずいぶん険しい顔をしているね」 「あっ、護衛の配置を見直そうと思いまして」  王子には軽く見透かされてしまう。 「もう?」  王子が軽く笑った。 「君は本当に仕事が早いね」 「王子の秘書官ですから」  私は王子の机に近づく。  そのとき、机の端に置かれた書類が目に入った。王子の訪問予定をまとめた資料だ。  私はそれを何気なく手に取った。    ――折り跡。    紙の端に、わずかな跡がついていた。私の作った資
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第23話 特訓と嘘と

 翌朝、早朝も早朝の王宮の中庭。王宮全体がまだ動き出す前のまだ朝露の残る芝の上に、私はマリク王子とともに向かった。「気が乗ってなさそうですね、王子」 私が声をかけると、王子は振り向いて苦笑した。「太陽の紋章を受け継いだとはいえ、争いは苦手だよ。使いこなせるかどうか……」「王子……」  いつになく弱気な王子。共感するべきか激励すべきか悩んでいたところへ、背後から朝にしてはうるさい声が響く。「おはようございます! 王子!」 振り向かなくてもわかる、フリーダだ。 そっと息を吐いていると、気楽な足取りで歩いてきたフリーダは王子の前に立った。 「王子、今日は付きっきりで、手取り足取り紋章の使い方を教えてさしあげます」  む……。 「フリーダ。頼むよ。君になら安心して任せられる」  私は王子の前に立った。 「待ってください。紋章を教えるのに手取り足取り使う必要はありません。王子……気を付けてください」  王子は不思議そうに私を見る。フリーダがふふっとおかしそうに笑った。 「秘書官さん。比喩よ比喩。……気を付けてって何を想像したのかしら?」  頬が熱くなる。 「そ、それは!! な、なんでもない」 「大丈夫だよ。ティナ。ケガをしたりはしないから」  王子の手が私の肩に触れて、私はなにも言えなくなってしまった。 
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第25話 アーダンとの戦闘

 午後、私は懐かしの王宮の訓練場にいた。 中庭の静けさとは違い、そこでは金属音や兵士たちの掛け声が絶えず響いている。  乾いた土の匂い、汗の匂い、剣を振るうたびに巻き上がる砂。壁際では若い兵が木剣で打ち込みの練習をし、奥では近衛たちが本格的な組み手をしていた。 「おっ、秘書官殿が訓練場とは珍しいな」  低い声に振り向くと、予想通りアーダンが腕を組んで立っていた。王の近衛兵長になったとはいえ、アーダンがよくここにいるという噂は本当だったようだ。 「兵たちが心配なのか?」  私の質問にアーダンは、大声で笑う。 「ああ、心配だな。いつまで経ってもこいつらは世話を焼かせる」 「ふふっ、ならお願いがある。私と一戦交えてくれ」  アーダンの目が細まる。「……本気か?」「ああ」 迷いなく答えると、アーダンは私の顔をじっと見つめた。「事情があるように見えるが」「聞かないでくれ」「そうか」 アーダンはそれ以上追及しなかった。新兵に鉄槍を二本持ってくるよう指示を出す。「構えろ。ティナの得物は腰のそれでいいのか?」 「もちろん。私の剣は、これしかない」 アーダンが二本の鉄槍を手にし、距離を取る。アーダンの宿す<重槍の紋章>が目に入る。  私は剣を抜き、深く息を吸った。 強くなる。王子を守るために。──今度こそ、失わないために。「行くぞ」 最初に踏み込んだのはアーダンだった。速い。
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第26話 紅茶の思い出

 そうだろう。失われたはずのものはもう夢の世界にしか存在しない。 ふと、幼子の声がして顔を向ければ見知った顔が2人歩いていた。咄嗟に牛と牛の間に隠れる。 いや、何をやってる。夢なのだから隠れる必要はないはずだ。『この牛のミルクが僕たちの宮殿にも届くの?』『うん、そうだって。お父さんとお母さんが言ってた。うちのミルクとうちの茶葉で作ったミルクティーが一番美味しいんだって。私もいつか大きくなったら、ミルクと茶葉を持っていってマリクに紅茶淹れてあげるね』 これは、私とマリクだ。幼い頃の王子と私が一緒に散歩している。しかも手をつないで。 あのとき、私が王子と過ごした期間はほんの数日だった。辺境の視察に同行していた王子が、私に話しかけてくれたことがきっかけで始まったやり取りだった。 この数日間は今でも覚えている。 王子と私は日が暮れるまで外で過ごし、他愛もないことを話していた。 私は悟られまいとしていたが、この後あることを告白しようとしていたから内心は穏やかじゃなかった。 このときに王子と出会って──私の運命は変わったんだ。 場面は変わり、私は一人自分の部屋の中にいた。強い風が壁を打ちつける中、微笑みながら王子からもらった絵本を読んでいる。……この先は、ダメだ。見たくない。『あれ?』 階下から物音がする。私は、もしかして王子が戻ってきたのかと思い、扉を開けていた。ゆっくりとした足取りで居間へと降りていく。やめろ、ダメだ。やめろやめろやめろやめろ!『ヒッ……!』 幼い私は見た。 ランプの灯りが照らすのは葡萄《ぶどう》酒のような血溜まり。 見知らぬ男がお父さんの胸にナイフを突き立てていた。耳をつんざくような悲鳴が上がる。私の悲鳴──。 助けられなかった。何もできなかった。あのときも、そして今も……。 王子、マリク王子。私は──。*「……ティナ」 誰かが私を呼ぶ声で、意識が急速に浮かび上がる。「ティナ、目を開けてくれ」 重いまぶたを持ち上げると、最初に目に飛び込んできたのは青い瞳だった。「王子……?」 ぼやけた視界の向こう、マリク王子が心配そうに私を覗き込んでいた。 額にかかる髪が少し乱れている。あんなに整っていた人が、こんな顔をするなんて。「よかった。目が覚めた」「どうして、ここに……」「どうしてって、君が訓練場で倒れ
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第27話 神の祝福は得られなかった

 部屋が夕闇に包まれる。王子の命令通りベッドで横になっていた私は、控えめなノックの音に体を起こした。「入るわよ」 返事を待たずに扉が開き、赤い瞳が覗く。フリーダだ。「起きてるみたいね」「……ああ、まだ寝る時間でもない。王子の特訓は?」 私は体を起こしたまま、視線を落とした。胸の奥に残るざわつきはまだ消えていない。 フリーダはベッドの脇まで歩いてくると、椅子を引き寄せてどかりと腰を下ろした。「中止よ。王子ったら、優秀な秘書官が気絶しただけで全然集中できなくてダメ」「なっ……すまない。私のせいだな」 手を握り締める。完全に空回りだ。王子まで心配させて。「いいわよ。今日は魔法の発動ができただけでも上出来。……で? 調子は?」 頭を横に振ると、視線を上げる。「問題ない。少し気を失っただけだ」「そういうのを問題ありって言うのよ」 呆れたように肩をすくめるフリーダは、そのままじっと私を見つめる。 「ティナ。あんたの力の話。方法を一つ思いついたわ。誰でもできることじゃないけど、試してみる価値はある」「! 教えてくれ! 王子を守るためならなんでもする!」 毛布を払おうとした私を止めると、フリーダは息を吐いた。「落ち着きなさい。その前に確認することがあるわ」 フリーダが真剣なまなざしで私の瞳をのぞく。「なんであんた、紋章も魔法も使えないの?」 心臓が跳ねた。「そ、それは……」「剣の腕はすごいわ。けど、紋章の力にごり押しされたら必ずあんたは負ける」 フリーダの赤い瞳が観察するように私を見る。今までと違ってごまかしはきかないかもしれない。「アーダンのおっさんみたいに魔法が使えなくても、紋章でカバーしようとする人は多い。でも、私の見立てでは、あんたはそもそも紋章が宿せない。違う?」 確信めいた質問だ。実際、それは事実だった。私は剣を選んでここまできたわけじゃない。剣しか使えないからこの道を選ぶしかなかった。「死に戻りのことと言い。あんたは普通の人間とどこか違う。まだ隠していることはない?」 ある。私が紋章を宿せない理由。それは神に祝福されていないから。 フリーダは足を組むと、その上で頬杖をついた。「あんたも知っている通り、すべての紋章は【9つの神の紋章】から成り立つ。王子が宿す太陽の紋章もその一つ。本来なら、程度の差はあれど人
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第28話 契約の光

 夜半。王宮が眠りについたころ、私はローブを羽織り、音を殺して城を抜け出した。 街へ出ると冷たい夜気が肌を刺す。人気がないから石畳を踏む足音さえ、やけに大きく感じる。 向かう先は、住宅区の入口にある教会。かつて私が育った孤児院でもある。 教会は夜でも城下町に住む民のために入口の扉は開いている。中へ入ると、礼拝堂や2階につながる扉はカギが掛けられていたが、懺悔室には煌々と明かりが灯されていた。 懐かしい匂いがした。古びた木の匂いだ。王宮での生活にももう慣れたが、ここへ来るとやっぱり肩の力が抜ける。 私は懺悔室の扉を押し、静かに中へ入った。ランプと一人用の木椅子、そして格子状の窓しかない狭い部屋。 使い古された椅子に腰を下ろし、私は目を閉じた。  フリーダの言うことが本当なら、ここで神と取引ができる。教会は神と通ずる場所だからだ。 私はかつて神父様から習ったように、両手を固く組むと目を閉じた。「こんな時間に、どうしたのですか?」 格子の向こうの扉が開き、穏やかな声が降ってくる。「……神父様」 そこには、私を育ててくれたクレメンス神父の気配があった。直接見ることはできないが、声の調子はいささかも変わっていない。「久しぶりですね、ティナ。念願かなって秘書官になったとか。この間のフォヴォラの襲撃事件。あなたの指示で誰も死者が出なかったと聞いていますよ」「……いえ。私は別に。それに、肝心の咎人は捕まえることが叶いませんでした」「そうですか。……咎人、神の反逆者たちですね」 私は唇を噛む。 「ええ……」「ティナ。何か、抱えているのでしょう。わざわざ人目を忍ん
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第29話 罠

「で、どうだったのティナ」 翌朝。王子と朝食を済ませた後、自室に戻った私にフリーダはにやけ顔で聞いてきた。「実感はまだわかない。だけど、昨日白い光に包まれて……契約は成立したのかもしれない」「なによ、あいまいね」「ああ。けどあとはおそらく実戦で確かめるしかない。それより──」 扉の方を気にして見ると、フリーダもちらっと後ろを向いた。「大丈夫。私一人よ」 フリーダは、愉快そうに髪の毛をいじり始める。「内通者でしょ? 手はもう打ってるの?」 そうだが……なんでこう、こいつには緊張感がないのか。まあ、考えても仕方ない。「偽の情報はもう仕込んである。王子の机の書類には、朝食のときにわざと違う予定が書かれた紙を入れておいた。紋章宮や訓練場、想定されるあらゆる場所でそれとなく偽の情報を流している」 フリーダは人差し指を唇に当てると考えごとをするように瞳だけを上に動かす。「でも、混乱しない?」「混乱する。それが狙いでもある」「どういうことよ」 私は、正規の予定を書き込んだ髪をフリーダに渡した。「内通者が一つの情報しか得られていない場合、咎人が王子と会う予定は狂うことになる。ただ、複数の予定を知った場合、正しい情報を得ようと秘書官である私に近づいてくるはずだ」「ああ、なるほどね。王子よりもあんたの方が正確だものね。で、怪しい人物は叩く」「すぐに叩くわけじゃない。内通者が誰かによる。だが、割り出せれば対応はしやすい」 私は、剣を身に付けるとドアノブを触った。「王子にはくれぐれも内緒にしてほしい。フリーダは、中庭で昨日の通り王子の特訓を頼む」「わかってるわよ。ティナがいないところでいちゃいちゃするんだから!」「だから! 無駄にいちゃいちゃしなくていい!! 王子に近づくな!!」 顔が熱くなって、思わず声が大きくなった。* いつも通りの喧騒に包まれるなか、私は王子の執務室の前に立った。 何度かノックをするが、応答がない。「返事ないわね? トイレ?」 「いや──王子、失礼します」 中へ入ると王子の姿はなかった。「やっぱり、トイレにでも行ってるんじゃない? 少し待ってればきっと──」「違う」 注意深く見ないと気づかないが、机の書類が乱雑に積み重ねられていた。それに、ティーカップの側には砂糖瓶が置かれている。「王子は、紅茶に砂
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第30話 秘密の告白

「……王子」 思わず後ずさりする。笑顔だけど目が笑っていなかった。「あっ、王子探してたんです! 中庭で昨日の特訓の続きを──」 フリーダは引きつった笑顔で王子の腕に触れた。なんとか王子の気を逸らそうとしているが、王子はやんわりと腕を離すと私の前に歩んでくる。 ダメだ……逃げ場はない。 マリク王子は変わらぬ笑顔のまま、私の両肩に手を置いた。「ティナ。残念だけど、君が何か隠していることには気づいていた。君のことは信じていたから、打ち明けてくれるのを待っていた」 こんな状況でも、王子の瞳は私を見つめる。胸がぐっと締め付けられるのを感じる。目を見ていられなくて、視線を逸らす。「けど、昨日のアーダンとの試合。それに夜中にこっそり部屋を抜け出していたね? 放っておけない。君は何を隠しているんだ」 昨日のこともバレてるの? 私は視線を上げるとまた王子の瞳とぶつかる。『君は、もう僕の大切な仲間』 ノルドマン防衛大臣にとがめられたあと、王子はそう言って私を励ましてくれた。 マリクの瞳は、幼いあの頃から変わっていなかった。背丈は伸び、たくましくなっても瞳の色だけは変わらない。 あのとき、私はマリクに聞いたことがある。将来国を継ぐマリクが守るみんなの中に、私はいるのか、と。 柔らかい風と草の匂いを思い出す。そのときは、私よりもまだ背が低かったマリクが、同じ青い瞳で私を見つめていた。『マリク。マリクが守るみんなの中に、私は……いる?』『もちろんティナも入ってるよ。ティナはこの国に住む人だもん。それに、僕の大切な友達だ』 友達。そう、マリクは言ってくれた。 私は大きく息を吐くと、マリクの瞳から目を離さずに口を開いた。「……内通者がいます。王宮の中に、咎人と通じている者が」 王子の目が細められる。「その可能性は、僕も考えてた。だから周りを信頼できる少人数に固めていたんだ」「王子、私は確証を得ました。アヌ国への道程が筒抜けになっている。執務室に忍び込み、予定を流している者がいます」 王子は私から手を離さずに、自身の机を見る。その表情は冷静そのものだった。「偽の情報を流したんです。内通者をあぶり出すために」「なるほど、わかったよ」 王子の手に触れる。「王子を危険にさらしたくなかった! だからこそ、知られないように……」 言葉が詰まる。王子が
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