朝日が差す前の空は、夜とも昼ともつかぬ鈍い青をしていて、琉苑はその色がなんとなく好きだった。はっきりとした光も影もない、あの曖昧さの中にだけ、物事の狭間が存在できる気がしたからだ。目覚めてから、しばらくのあいだ、琉苑は寝台の上で身動きもせずに天井を眺めていた。横にはシュアがいない。明け方前に出かけていった。理由は言わなかったが、何かを察したような声で「待っていろ」とだけ残して。「……だったら、こっちはこっちで動いてもいいか」声に出してから、琉苑は布を跳ねのけるように立ち上がった。何かを決めるには、たとえばそれが身勝手な決意だったとしても、行動を始めなければ何も変わらない。そういう気分だった。ゆるく整えた衣を纏い、廊下を抜け、厨房の奥へ。ルシェリアはちょうど木箱の中身を整理している最中だった。干した薬草と乾いた果実の甘やかな香りが、部屋の空気に色をつけている。「ルシェリア」声をかけると、彼女は振り返った。思っていたよりも驚いた様子はなく、むしろ少しだけ警戒を解いたような笑みを浮かべた。「お目覚めになられましたか、リウさま。まだ朝食には早いですけれど……」「食事じゃない。訊きたいことがあるんだ」琉苑の口調は、実に直球的だった。だが、遠回しにすればするほどこの問いは曖昧になる気がして、それを避けたかったからだ。ルシェリアの手が止まる。「人をやめる方法を、知ってるか」その一言に、彼女のまつ毛がわずかに揺れた。すぐには答えない。ただ目を伏せたまま、手元の木箱に視線を落としていた。沈黙が、空間を塞ぐ。が、やがてルシェリアは小さく息をつき、囁くように言った。「……詳しくは、存じません。リウ様……それは、我が主人には秘密の何かでございますか?」ルシェリアが問う。秘密、というほどではないが、勝手に動いてる面もある。どう答えるべきか、琉苑が考えていると、「……マースさまであれば、何かをご存じかもしれません」その名が出た瞬間、琉苑の胸に妙な熱が灯った。以前、ほんの一度だけ顔を合わせたことがある。謎めいた存在。己の立場を飄々と語りながらも、その目には底の見えぬ深さがあった。「マース……」ルシェリアが頷く。「会いたい。連絡手段はあるのか?」そう言われ、ルシェリアははっきりと戸惑いを見せた。困ったように視線をさまよわせ、言葉を
Last Updated : 2025-12-04 Read more